経験した方にお話を聞くと、皆さん「とにかく大変だった」と口をそろえる相続の手続き。特に財産の名義変更は、書類を集めるのにも一苦労、とのこと。そこで役に立つのが、無料メルマガ『こころをつなぐ、相続のハナシ』で紹介されている、「相続の際に必要な書類とその意味」です。現役行政書士の山田和美さんが丁寧に解説してくださっています。
相続が起きた後必要な書類と、それぞれの意味
相続が起きると、非常に多くの手続きが押し寄せます。相続税申告などの税の手続き、電気・ガス・水道の引落口座の変更などの日常生活維持のための手続き、預金口座や不動産、株式など財産の名義を変える手続きなどです。
この中でも特に、財産の名義を変える手続きには、多くの書類が必要です。相続人の状況や、遺言書の有無などによって必要な書類は変わりますが、ここでは遺言書がない場合に必要な、基本の書類と、その書類が必要な理由について解説します。
1 遺産分割協議書
相続人の中で、誰がその財産をもらうのかを話し合い、その結果を記載した書類です。本当に納得しているという証拠に、相続人全員が実印を押します。
2 相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に押した印鑑が相続人の実印であることの証明に使います。
3 相続人全員の現在の戸籍謄本と、被相続人の出生までさかのぼる戸籍・除籍・原戸籍謄本
遺産分割協議書に押印した人が本当に相続人であること、そして他に相続人がいないことの証明に使います。
なお、結婚等をすると、子は親の戸籍から抜けます。そして、その後改製や転籍等で新しくなった戸籍には、すでに抜けた子供の記載は載りません。そのため、相続人を確定するには、古い戸籍まで取得する必要があるのです。
4 相続人全員の住民票(本籍地の記載あり)
実は、住民票が必要なのは、住所を知るためではありません。印鑑証明書の住所と住民票に記載の住所は必ず一致しますので、住所が知りたいだけであれば、印鑑証明だけで十分です。
ではなぜ、住民票が必要なのかと言うと、「印鑑証明書と戸籍謄本をつなぐ役割」です。印鑑証明書には、住所は載っていますが、本籍地の記載はありません。一方、戸籍謄本には本籍地は載っていますが、住所の記載はありません。そのため、この2通の書類をつなぎ「印鑑証明に記載のAさんと、戸籍謄本に記載のAさんが同一人物」という証明が必要です。
住民票に求められるのはこの2枚をつなぐ役割であるため、相続の手続きで使う住民票は原則として、「本籍地の記載があるもの」なのです。
相続が起きた後で必要になる書類には見慣れないものも多く、集めるのは大変です。ただ漠然と書類を集めるより、このように、それぞれの書類が必要な理由やその役割を知っておくと、手続きも進めやすいのではないでしょうか。
また、特に被相続人の出生まで遡る戸籍等の書類の収集は、大変な想いをされるかたも少なくありません。当事務所でも全国対応で戸籍謄本の収集の代行は行っていますし、他にも対応可能な事務所もありますので、お困りの際にはそのようなサービスを活用してみるのもよいと思います。
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