どうしたニッポンのモノづくり。世界との差は二度と埋められないのか?

どうしたニッポンのモノづくり。世界との差は二度と埋められないのか?
 

Mr.リストラが日本を破壊

その半面日本は、バブルの衰退の対応に追われ、大企業ゆえ小回りが利かず新たな事業が育っていない。その中でソニーのAIBOは研究開発の縮小のみならず人材も流出。社内では閑職に追い込まれ、仕事を求め韓国や中国の企業に移るケースも少なくなかった。私はこの当時随分取材したが、トップと共に部下も働く場を求め他社に移ったことで韓国や中国の企業が強くなり日本が弱くなるという現象に至った。

また、ソニーや家電メーカーを辞め海外で活躍している人も多い。ストリンガー氏の事は昔この番組でも取り上げたことがあるが、ストリンガー氏はアメリカでもMr.リストラで、日本もリストラの嵐が吹くぞと言っていたら案の定そうなった。さらに、ストリンガー氏はモノづくりよりも映像などソフトに力を入れ、ソニーもそういう会社に変貌してしまった。

モノづくりを怠る

ここ数年間、日本では三菱自動車、旭化成建材、三井不動産、東芝、東洋ゴム、タカタなど企業不祥事が相次ぎ、日本のモノづくりはどうなっていくのかということもいわれている。モノづくりを怠っている間に、アメリカでは新しい次世代を担う製品が伸びてきたことが、今回のテーマの大きな問題である。

しかしながら最近、日本は反省し、新たな流れが出てきた。今回のソニーの人工知能への取組みも1つの流れだと思うし、企業では新たな分野を拡大するため研究開発費を拡大しようという動きも出ている。昨年の日経新聞の調査(研究開発活動に関する調査)では、過去最高の研究開発費を投じた企業が約3割あった。投資内容も人工知能など新たな製品を作り出そうとしている。

ベンチャーの育成を

私は新たな分野の拡大をベンチャーがやるべきだと思う。大企業は小回りがきかず、ベンチャーがこういう取り組みをすることが日本を強くする要員の1つになるように思う。これに対し、もっと国が後押しするような政策をやっていくべきだとも思う。

他方、日本人全般がまだ大企業のほうがよいという信仰があり、若い人で大企業を目指す人も少なくない。はじめからベンチャーでチャレンジするんだという人たちが、最近ようやく出てきた。日本は少し遠回りしたが、戻れるように頑張って欲しい。私は日本人は基本的に優秀だと思うので、なんとかなるのではないかとも思う。

この20年の世界の時価総額のランキングに日本企業が非常に少ないのも悲しいことであり、中国企業が台頭してきて中国とアメリカの台頭になっている。あっという間に変わっていくだけに、日本企業の復活を切に願う。

※なお、ブログでは、1989年の世界の時価総額ランキング等の画像を掲載しております。ご興味をお持ちの方は合わせてご覧ください。

時代を読む 

(TBSラジオ「日本全国8時です」5月31日音源の要約です)

image by: Shutterstock

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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