東電「メルトダウン隠蔽」の背後にもいた、舛添氏の逆ギレ弁護士

 

今回の東電「第三者検証委員会」は、田中康久弁護士元仙台高裁長官)を委員長とし、佐々木ともう一人の弁護士が委員をつとめている。小渕優子の政治資金収支不一致問題では佐々木弁護士が委員長、田中弁護士が委員だったが、東電では前回、今回とも田中弁護士が委員長として前面に立つかたちになっている。

田中弁護士の高裁長官という経歴は、客観中立の衣を纏うのにすこぶる都合がいいようだ。表に76歳の元高裁長官を押し立てて、実務の中心を担ったのが63歳の佐々木弁護士であろう。彼らの「第三者検証委員会」は検証結果報告書をまとめて6月16日、記者会見した。

驚いたのは、調査手法が舛添のケースとそっくりであることだ。舛添前都知事の公私混同問題について、「第三者」は事実関係をほとんど舛添やその近親者の言い分だけで認定し、多方面から話を聞いて客観性を確保する作業をあえて避けた。東電に関しても、ヒアリングをしたのは東電の社長や幹部ら内部の60人に限り、当時の官邸や政府関係者からは一切聞き取りしていない

報告書の次の二つの記述に注目してみたい。

清水社長が、記者会見に臨んでいた武藤副社長に対し、広報担当社員を通じて、「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡させ、「官邸からの指示により、これとこの言葉は使わないように」旨の内容の耳打ちをさせた経緯があり、この事実からすれば、清水社長が官邸側から、対外的に「炉心溶融」を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される。

その一方で、このような記述も見られる。

この点につき、当第三者検証委員会は、重要な調査・検証事項の一つと捉え、清水社長や同行者らから徹底したヒアリングを行ったが、官邸の誰から具体的にどのような指示ないし要請を受けたかを解明するには至らなかった。

これはまことに奇妙な調査報告と言わざるを得ない。徹底的にヒアリングして官邸の誰からどのような指示を受けたか分からないにもかかわらず、官邸が「炉心溶融」を認めることについて慎重な対応を東電に指示していたかのように書いているのである。

清水社長はその件に関して記憶していないという。いくら心理的パニックに陥っていたとしても、武藤副社長に、官邸からの指示として渡したメモの内容について忘れてしまったとは考えにくい。

しかも、武藤副社長にメモを渡しながら、わざわざ「官邸からの指示で」とマイクに届くように囁いたのが広報担当社員であったという事実は重大な疑念を呼び起こす。広報の社員なら、マスコミ各社のマイクやボイスレコーダーがテーブル上に並んでいるのを強く意識しているはずであり、そのためにこそ声を出さず、メモという形で伝えるわけである。

ただし、「官邸が…」と声を出すよう清水社長から広報担当社員へ指示があったとすれば、清水社長が意図的に官邸に責任転嫁した可能性もあり、「記憶がない」で押し通している理由もなんとなくわかる。

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