明暗くっきり。失速ユニクロと好調しまむらに見る業界のジレンマ

 

ファストリの失速とは反対に、「しまむら」の業績は好調です。16年2月期決算は、売上高は6.7%増の5,460億円、営業利益は8.4%増の399億円で増収増益です。続く16年3~8月期決算は、売上高は5.8%増の2,810億円、営業利益は40.6%増の251億円で増収増益です。17年2月期決算では過去最高益を見込んでいます。

しまむらの業績好調の要因としてヒット商品に恵まれたことが挙げられます。まずは「裏地あったかパンツ」です。裏地に起毛素材を使用し、一枚でも温かさを保つことができることが売りとなっています。定価が3,900円でしまむらでは比較的高額ですが、100万本以上売れました。「裏地あったかパンツ」のヒットを受けて今年の春からテレビCMなどで話題となっていた、涼しさが売りの「素肌涼やかデニム&パンツ」も好調に推移しています。

「裏地あったかパンツ」と「素肌涼やかデニム&パンツ」の機能性商品が業績を牽引しましたが、しまむらの快進撃の理由はこれだけではありません。機能性商品に加えファッション性商品が好調だったことも理由として挙げられます。

ファッション性が高い「コラボ商品」が業績を牽引しました。16年3~8月期では、「ハリスツイード×ディズニー」「ガールズ&パンツァー」「PHANTASY STAR ONLINE 2」「おそ松さん」「LOGOS DAYS×スヌーピー」「秘密結社 鷹の爪」「モンスターハンター×ぐでたま」「セガ」などとのコラボ商品を販売しています。コラボ商品は一例で、他にもファッション性のある商品を販売し、業績に大きく貢献しました。

GUとしまむらは「ファッション性」の追求が功を奏しています。一方、機能性を代表とする「品質」では、ユニクロとしまむらで明暗が別れました。しまむらは今まで、ユニクロほど品質にこだわりがあったわけではありません。そうした中で高機能商品を投入し、結果として大ヒットすることになりました。とはいえ、高機能商品で大ヒットしたのは「裏地あったかパンツ」と「素肌涼やかデニム&パンツ」くらいです。しまむらでは高機能商品の開発の余地はまだまだありそうです。

それに対し、ユニクロは素材メーカーの東レと戦略的パートナーシップを締結し高品質商品を開発していますが、出尽くした感が否めません。

GUではファッション性を高めていく方針です。そうした中で、ユニクロの方向性が見えていないのが現状です。ユニクロでもファッション性を高めていくのであれば、GUとの明確な違いを打ち出す必要があります。GUとの明確な違いを打ち出せなければ、現状でも起きているユニクロとGUでの顧客の奪い合いがさらに深刻化することになります。

ファストリの失速としまむらの好調な業績から、今の時代のアパレル産業の課題が見えてきました。しまむらの業績は今は好調ですが、今後においてファストリと同様の問題に直面することは十分考えられます。楽観視できない状況です。アパレル不況が続いていると言われる今、業界を代表するファストリとしまむらの動向に注目が集まりそうです。

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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