疑惑の国有地売却事件。日本初の神道小学校、名誉校長は首相夫人

 

さて、この怪しげな国有地取引をかかえたまま開校する瑞穂の國記念小學院は、簡単にいえば、塚本幼稚園の小学校版であろう。

ホームページに、「教育の要」として11項目が掲げられている。最初の3項目をみれば、はっきりと学校の特質がわかる。

天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ。伊勢神宮・天照大御神外八百万神を通して日本人の原心(神ながらの心)、日本の国柄(神ながらの道)を感じる。

愛国心の醸成。国家観を確立。

教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)。道徳心を育て、教養人を育成。

この教育方針は森友学園理事長(塚本幼稚園園長)で、瑞穂の國記念小學院の校長、籠池泰典の理念によるものだ。籠池は日本会議大阪の役員である。

同小の名誉校長となった総理夫人安倍昭恵氏は次のような挨拶文を寄せている。

瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。そこで備わった「やる気」や「達成感」、「プライド」や「勇気」が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております。

安倍総理夫人は塚本幼稚園を見学して感涙したといわれる。夫婦仲がどうかは知ったことではないが、ナショナリストとしての感受性はご亭主と相通じているようである。

それにしても安倍総理夫人がからみ日本会議の役員がトップをつとめる学校法人は、国有地払い下げにおいて、これほどにも優遇されるものなのだろうか。

だが、考えてみれば、この一件を報道した新聞社もかつて格安の価格で国有一等地の払い下げを受けていた

個人や民間企業の持ち物ではないという気安さからか、国有地に関して、これまで不公平な取引がまかり通ってきたことは間違いない。

たとえば、朝日新聞は東京本社の有楽町社屋が手狭になったため1970年、築地の海上保安庁水路部の跡地に目をつけ、関東財務局に払い下げ申請をした。

75年ごろに払い下げを受けたようだが、一坪当たり56万円ほどだったといわれる。当時の相場からみて4分の1ていどで都心の一等地を手にした勘定だ。

東京・大手町における読売新聞と産経新聞の国有地払い下げをめぐる暗闘は熾烈だった。

読売の大手町進出には、候補となった国有地の隣に社屋をかまえる産経新聞の会長、水野成夫が反対し、親密な関係にある佐藤栄作首相にねじ込んで大蔵省の読売払い下げ決定を覆した

読売の務台光雄社長はこれに猛反発し、紙面でも反佐藤の論調がエスカレートした。佐藤はついに折れて財界四天王といわれた水野を説得し、これも格安の値段で読売への払い下げを決めた

当時、政治部のエース記者だった現読売グループのドン、渡邊恒雄はこの件で佐藤首相宅に呼び出されたときのことをこう述懐している。

佐藤首相の私邸に行ったよ。…(佐藤首相は)突然「渡邊君、きみのワシントン行きの餞別にあの土地を払い下げます」と言うんだ。…ある種のユーモアだろうけど…僕はびっくりしたね。…佐藤首相は、務台さんに直接言うのが面倒だったんで、僕を使って伝言させたんだが、同時に僕の顔を立ててやろうと思ったんだろう。

つまるところ、これは総理に強い気持ちさえあれば財務省の国有地払い下げの判断を変えることができるということだろう。当時の佐藤と、今の安倍でも、さほどの違いはないのではないか。

政治は人間関係という厄介なものに左右される。総理に国民の顔は見えないが、官邸にしばしば姿を現す人々、たとえば高級官僚、外国要人、実力政治家、財界首脳、圧力団体のトップらには気を遣う。利害得失に好き嫌いや愛憎がからんで、国民の知らぬうちに国のカネや財産が食いつぶされる

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