日本カーオブザイヤーはなぜ、単なる「お祭り」に成り下がったか

 

偉そうな口ぶりが続いて恐縮だが、私はCOTYは年に一度のお祭騒ぎこそ相応しいという考え方をしている。委嘱された当初はひっきりなしの接待の申し出に辟易とした。それまで飲み歩く習慣を持たない者が夜のお誘いを受けて面白がれるはずもない。

ナイトクラブの雰囲気に嫌悪感を抱いたのは本当で、ある時生意気を承知で店のママに小声で尋ねた。「ここに来ているおっさん達、何やってるの? 早く帰宅すればいいのに」すると「お客さまの多くはちゃんとした会社の部長さん。でも、社内では上役には気を遣い部下には煙たがられ、家に帰れば仕事人間の悲しさで女房にも子供にも冷たくされちゃう。ここに来れば愚痴も聞いてもらえるし弱音も吐ける。英気を養う場所なのよ」そんな内容の話を聞いた。狭かった世間がパッと広がった気がした。

誤解を恐れずに書けば、そうして回っていた社会がかつては間違いなく存在した。接待を受ける境遇を得て知ったことだが、ここで私が考えたのは「お誘いはすべてきれいさっぱりお断りするか、可能なかぎり受けるか」。なしにすれば脛につく傷もなくなるが、リスクを背負って乗れば痛い目に会う機会が増える反面知らない世界が見れるはず。賢い生き方ではないかもしれないが、直感に従う性癖の持主である。

結果として脇の甘さにつながり、嫉妬を集めては寝首を掻かれるような思いを何度もするようになった。30代前半からのプレスツアーに始まり、ベスモキャスターから請われての日本自動車ジャーナリスト協会入り。CSTVのレギュラー番組は1995年から12年間続き、その間COTYのテストデイから投票に至る模様をオンエアし続けた唯一の放送媒体だったことを知る者は少ない。

image by: oatz stocker / Shutterstock.com

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価値観が大きく変化しようとしている今、なすべきことは何か? このまぐまぐ!のメルマガ『クルマの心(しん)』を始めて多くのことに気づかされました。ずっとフリーランスでやって来て40年、還暦を迎えたこの段階でまだまだ学ぶことが多いですね。どうしたら自動車の明るい未来を築けるのだろうか? 悩みは尽きません。新たなCar Critic:自動車評論家のスタイルを模索しようと思っています。よろしくお付き合い下さい。

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