悪化する日ロ関係、その理由は?
米ロ関係は、好転している。その一方で、悪化しているのが日ロ関係です。
皆さんもお気づきでしょう?
メドベージェフや他の閣僚が、続々と北方領土を訪問している。ラブロフさんは、「北方領土問題は話し合わない」と断言している。
ちなみにニューヨークで、安倍総理とプーチンが会談しました。私は、ロシアでどう報道されるか、注意していました。ところが、国営放送RTRのニュースで、「ゼロ」です。これには驚きました。
一体日ロの間で何が起こっているのでしょうか?
まず、ある理由で、日本にとってロシアの重要性が薄れました。
1.アメリカに制裁を強要される
これで、「日本国政府として」、両国間の経済協力を進めることが難しくなりました。民間はがんばってますが、「政府として」それを公にプッシュすることが難しい。
2.原油価格の暴落
福島の事故で、日本の全原発が止まった。それで、原油、天然ガスの輸入が激増しました。原油、天然ガスの値段は、去年まで大変高かった(例:北海ブレントは昨年夏時点でバレル115ドルだった)。
そのため、日本では「貿易赤字」が大問題になっていたのです。日本政府は、「遠いカタールではなく、近いロシアからもっと安い天然ガスをいれたい」と願っていました。
ところが、原油価格が暴落した。115ドルだったのが50ドルまで下がり、半分以下になった。ロシアにとっては大打撃ですが、日本にとっては「神風」になりました。
しかも、「原油安」の理由は、「シェール革命による供給過多」である。つまり、「原油安は長期トレンドである」と思える。さらに、原油・ガス大国イランが、市場に復帰してくれば、さらに下がる可能性もある。これで、日本の「原油、ガスの供給元を多角化する意欲」が消え失せた。
ロシアの重要度は下がりました。
というわけで、日本政府高官とロシア政府高官が会うと、唯一のテーマが、「北方領土問題」になってしまった。当たり前ですが、ロシアにとって、「北方領土返還」は「損」です。それでも返すとすれば、「それなりの見返りがある場合」に限られるでしょう。
それは、「東シベリア開発への大規模投資」かもしれません。「極東への投資」かもしれません。いずれにしても、ロシアにとって、「北方領土返還」は「損」なので、話がそれだけだと、日本政府の人とあっても、うれしくないのです。
これ、日本人にとっては、「自分勝手な!」ということですね。「奪ったものは損得勘定抜きで返すのが当然だ!」と。しかし、事実として、ロシア側は「そう考えている」ということなのです。
では、どうすればいいのでしょうか?
米ロ関係の「うまいやり方」が参考になります。米ロは、まず「イラン問題」に共同で取り組むことにしました。その後は、「イスラム国問題」を協議しています。そうやって「同じ課題に一緒にとりくむ」ことで、関係が徐々によくなっていく。
要するに、北方領土を返して欲しければ、まずできることから「信頼関係」を醸成していくことが必要なのです。
こう書くと、必ず産経新聞が、「だまされる!」「利用される!」と批判します。それも、その通り。だから、慎重に、「日本も得、ロシアも得」になる案件でやっていかなければならない。WIN-LOSEではなく、つきあえばつきあうほど両国が得をする関係をつくっていく。
とはいえ、「別にそんなの必要ない」となるかもしれません。それもそうですね。
しかし、一点、「中国、ロシア2国と戦うのは難しい。中国とロシアを分裂させ、中国を孤立させれば、楽勝だ」というのはあります。経済的にはそれほど必要がなくても、安保面でロシアと仲良くしておいた方がいいです。
●結論3 日本とロシアの関係は悪化している。