町工場から世界に挑む~炊飯器で作るローストチキン
名古屋市のレストラン「ルコネッサンス」で、「ライスポット」を使った料理教室が開かれている。「下ごしらえだけ。あとはボタンを押すだけ。失敗しないです、絶対に」と言うのは講師の安形元晴さん。そして鍋に入れたのは大きな肉の塊だ。
実はライスポットには調理モードがあり、ご飯を炊くだけでなく、いろいろな料理が作れる。この日のメニューはローストビーフ。1度単位で保温設定できるので、低温調理も楽勝。仕上げに焼き目をつければ、プロ顔負けの出来栄えに。誰でもローストビーフが作れる。
この簡単調理器で愛知ドビーは世界進出も目論む。失敗なく料理ができる「ライスポット」は、アメリカ人にも受け入れられるはず。
「本気でアメリカ市場を取りにいきたい。勝機はあると思っています」(智晴)
既に現地へスタッフも派遣し、準備をしてきた。この日はサンフランシスコでモニター調査。よく料理をするアメリカ人を集め、実際に「ライスポット」を使ってもらい、反応を見る。
「炊飯機能と調理機能が付いていて、とても簡単ですよ」と説明するのはアメリカ事業開発責任者の林正明。これまで見たこともない調理家電に、みんな興味津々だ。
この日作るのは、アメリカでは家庭料理の定番、ローストチキン。まず「ライスポット」で30分じっくり火を通し、その後、鍋だけ外してオーブンへ。こうすれば、外側はこんがり、中はふっくら、ジューシーなローストチキンに仕上げることができる。
「ローストチキンはいつもササミがパサパサになってしまうんだけど、これは柔らかくジューシーです。こんなにおいしいのは初めてです」「鋳物ホーロー鍋は使い方が難しいけど、これはボタンで温度管理できるからとてもいいと思う。ニーズは必ずあるね」と、評判も上々だ。
まずは今年9月、ネット販売からスタート。愛知ドビーが世界へ羽ばたく。
~村上龍の編集後記~
多くの中小企業は後継者不在という危機に瀕している。「愛知ドビー」は兄弟が協力して後を継ぐという理想型で再建された。
だが、その道のりは、厳しい、ではなく、「ほぼ不可能に近い」だった。
異業種出身の二人はあきらめなかったのではない。あきらめることができなかったのだ。
バーミキュラは革命的な鋳物ホーロー鍋で、料理人が変わったのではないかと錯覚する。さらにレシピの種類が、鍋が持つ可能性にまだ追いついていない。
兄弟は社名を変えなかった。「愛知ドビー」創業以来の、技術力への誇りが刻まれている。
<出演者略歴>
土方邦裕(ひじかた・くにひろ)1974年、愛知県生まれ。1997年、豊田通商入社。2001年、愛知ドビー入社。
土方智晴(ひじかた・ともはる)1977年、愛知県生まれ。2003年、トヨタ自動車入社。2006年、愛知ドビー入社。
source:テレビ東京「カンブリア宮殿」
image by: YouTube RIZAP(ライザップ)公式チャンネル