行列、パクリ、下克上。スイーツの聖地・原宿アイス戦争の舞台裏

 

CNNが認めた台湾出身の「アイスモンスター」

一方、かき氷で長い行列をつくっているのは、台湾出身のアイスモンスターと韓国出身のソルビン」である。いずれも雪のように細やかで予め味の付いた、丼飯のように大盛りかつ具材が豊富な、従来のかき氷のイメージを覆すインパクトの強い商品となっている。

従来の日本のかき氷のようなシャリシャリの氷にシロップを掛けて食べるものとはまるで別物で、従来からあった台湾の刨冰とも、韓国のパッピンスとも異なっている。いずれも新食感のスイーツである。

「アイスモンスター」が台湾から進出したのは、2015年4月。看板メニューの「マンゴーかき氷」が1,550円と高額にもかかわらず最大7時間待ちとなる大行列となった。もうそれから3年も経っているのだが、未だに2時間、3時間待ちは当たり前になっている。

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アイスモンスターの行列は今も2、3時間など当たり前

店舗の位置は表参道に面し、明治通りとキディランドの中間あたり。熱中症対策も兼ねて、けやき並木の影なる歩道の端に行列を並ばせている。店舗は2層になっていて、立ち食いでいい人は1階でほぼ並ぶことなくかき氷が食べられる。立ち食いは丼鉢ではなく紙カップで提供され、値段も1割ほど安くなる。座る席もないのに大行列となっている、「ロールアイスクリームファクトリー」とは、事情が異なっている。

アイスモンスター外観

アイスモンスター外観

「アイスモンスター」のかき氷は、アイスブロックと呼ばれる味の付いたフルーツのジュースや紅茶を凍らせて、雪のように細かく削っているのが特徴。食感は根雪のように濃厚で重くジェラートに近く感じられる。

アイスブロックを削る製法が開発されたのは1992年で、1日に2,500人が訪れるほどの人気ぶりだ。2012年に台北本店が移転。店名も「思慕昔(通称・永康15)」から「アイスモンスター」に変更された。アメリカのTV局CNNで世界のベストデザート10に選出されるなど、世界的に評価が高い店である。

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日本での展開は、高級食品輸入販売の片岡物産(本社・東京都港区)と、カフェを中心とする外食のトランジットジェネラルオフィス(本社・東京都港区)の合弁会社、アイスモンスタージャパンが経営。

片岡物産は1960年創業で、英国の紅茶「トワイニング」、オランダのココア「バンホーテン」などを日本で定着させた凄腕の商社である。また日本のブランドでは宇治茶の老舗「辻利」のリブランディングにも近年携わって、じわじわと店舗を伸ばしている。

一方、トランジットジェネラルオフィスは2001年の創業。翌02年、外苑前にオープンしたカフェ「Sign(サイン)」が繁盛店となり、当時のカフェブームに乗った。08年鎌倉・七里ヶ浜に、オーストラリア・シドニーで朝食が評判の「bills(ビルズ)」を日本で展開する権利を得てオープン。この「ビルズ」が今日のパンケーキブームの火付け役となり、ハワイ発の「エッグスンシングス」、大阪発の「幸せのパンケーキ」などと共に今日も行列店の1つとなっている。

片岡、トランジットは共に、実績十分の食の専門企業であり、強力なタッグで「アイスモンスター」を推進している。国内は、グランフロント大阪、名古屋ラシックに店舗を広げて3大都市に展開している。また、期間限定で各地の主要都市に店舗を出しており、知名度アップをはかっている。

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かき氷で人気のスイーツであるジェラートのようなフレッシュな素材感を実現したのが「アイスモンスター」の成功要因だろう。丼鉢のような皿に山盛りのかき氷を盛り付け、「マンゴーかき氷」ならばマンゴーのシャーベットと切り身、パンナコッタをトッピングし、上からマンゴーソースをかけた迫力あるビジュアルも人気を後押ししている。

ところが、「アイスモンスター」に1年先立って原宿に14年4月に、台湾から進出してきたマンゴースイーツ専門店マンゴーチャチャ」は、かき氷「モテキ」が売りで女子受けするとオープン時は大いに話題を集めたが、17年4月に「台湾カフェ Zen」と名前を変えて営業を継続している。有楽町・イトシアの2号店は閉店してしまった。

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「アイスモンスター」の行列がウソのように大概はすぐに座れる。スイーツファンには穴場の店だ。「マンゴーチャチャ」もなかなかの有名店なのだが、日本の消費者から見れば、台湾マンゴーかき氷の店は「アイスモンスター」1店があれば十分だったようである。

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