客に媚びない。日本や台湾の若手らが炙り出す、10年後の自国の姿

 

タイ版の監督代表はアピチャッポン・ウィーラセタクン氏。2010年、『ブンミおじさんの森』が第63回カンヌ国際映画祭でタイ映画史上初めてとなるパルム・ドールを受賞したタイを代表するベテラン監督です。タイ版『十年』は、今年10月に行われた東京国際映画祭とカンヌ映画祭に出品されています。内容は以下の通りです。不安定な政治情勢を反映して、政治色の濃い作品が多いようです。

1.アーティット・アッサラット(『ワンダフル・タウン』TIFF2008)は、「Sunset」で表現の自由が制限された展覧会を、2.ウィシット・サーサナティアン(『快盗ブラック・タイガー』)は、「Catopia」で猫人間に支配された社会を、3.美術家のチュラヤーンノン・シリポンは、「Planetarium」で独裁者の女性が君臨する極彩色でグラフィックな世界を、4.アピチャッポンは、「Song of the City」で鼓笛隊の奏でる行進曲が響くなか、銅像の立つ工事中の公園と、そこで休息し語り合う人々を、それぞれ描いている。

十年 Ten Years Thailand

そして、我らが台湾の『十年』は台湾で今年7月に公開されました。若手5人の監督と、作品内容は以下の通りです。

『悪霊缶頭』を手がけた勒嘎・舒米監督は、プロジェクトに選ばれたと知った時はとてもうれしかったとした上で、先住民族の1人として映画を通じて先住民族の見方と、先住民族に関して速やかに広く知られるべきことを伝えたかったと話す。勒嘎・舒米さんは、「こうしたことをみな問題だと考えることに慣れてしまっているが、『十年台湾』はこの土地に様々な暮らしの姿があることを伝えている。台湾は海に浮かぶ島だが、そこには多様な生活がある」と述べている。

 

『睏眠』の廖克発監督はマレーシア出身。台湾で10年間映画を学んだ。廖さんは今回の機会を利用して自らの過去を振り返り、未来を展望したという。『睏眠』は睡眠と記憶を題材に社会を見つめた作品。面白いのは、タイトルから「目」を取り去ると、「困民」となること。初上映会で廖さんは、観客からの面白い質問に期待した。

 

『蝦餃』の謝沛如監督はユーモラスな手法で少子化問題を提起。『路半』の呂柏勲監督は、プロジェクト参加が決まってから、10年後にどんなことが起きるのかと考え続けたという。呂さんは、『路半』では地方に残った人と地方を離れた人たちの間でどのような出来事が起きるかを見てほしいと話している。

台湾版『十年』、5人の映画監督が未来を占う

こうして、香港、台湾、タイ、日本の『十年』が完成しました。10年なんてあっという間ですが、変化のスピードの速い現代社会において、それぞれの10年後がどうなっているのか、実に多くのことを考えさせられる映画です。そして、それぞれの社会がどのような問題を抱えているのかを若手監督たちが浮き彫りにしてくれています

print
いま読まれてます

  • 客に媚びない。日本や台湾の若手らが炙り出す、10年後の自国の姿
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け