交渉のプロが解説。米が北を攻撃しても中ロは非難に留まる理由

 

【南シナ海:高まる中国の領有意識と軍事的な挑発】

米中貿易摩擦の激しさゆえに、その陰に隠れてしまっている感じがしますが、以前から南シナ海の領有問題を巡り、アメリカと中国の対峙は継続中です。南シナ海は、アメリカの太平洋・インド洋におけるシーレーンを見るうえで非常に重要な位置にあり、そこを中国に抑えられると、同盟国の防衛上、大変大きなマイナスになるとの考えですので、どんどん海洋進出を進める中国を直接的に牽制しています。

これまでのところ、直接的な衝突にまで発展していませんが、最近、日本との防衛協力のため、日本近海・太平洋に向かっていた英国の艦船に対して、異常接近し、挑発行為を繰り返すという、これまでにない行動に出て、南シナ海を緊張の海に変えてしまいました。

今後、このような挑発行為が、偶発的な衝突に発展してしまったら、南シナ海も終わりなき戦争の海になってしまう可能性がありますし、そうなってしまうと、南シナ海で中国と対峙するフィリピンやインドネシア、ベトナムといった周辺国も巻き込んだ戦いにエスカレートする可能性が、これまで以上に顕在化してきています。

ただでさえ米中貿易摩擦の煽りを受けて、東南アジア諸国の経済は停滞していますが、仮に軍事的な衝突に発展してしまった場合、東南アジア地域の地図が大きく変わるかもしれません。

「極東」でくすぶる懸念

【アメリカの北朝鮮爆撃?!】

昨年6月12日に開催された米朝首脳会談を受け、一時期はその危機は去ったと諸手を挙げて喜んだメディアが多くありましたが、実際は、その際に決められた第2回目の会談はまだ実現していませんし、共同宣言に盛り込まれた朝鮮半島の非核化を巡る“解釈”もいまだに合致していません

2月をめどに第2回目の会談を開催すべく米朝間で準備が進められているとされますが、仮に実現したとしても、恐らく第2回目の会談が最後の会談になると考えています。

双方の解釈の溝は埋まりませんし、最近、金正恩氏が北京を訪問し、習近平国家主席の後ろ盾をアピールしたことは、すでにトランプ大統領をイラつかせてしまいました。それに加えて、朝鮮半島の核問題についての進展がほとんどない状況も、トランプ大統領をさらにイラつかせています

仮に第2回目の会談が行われても、その場で何らかの言質を北朝鮮側から取ることが出来なかった場合、アメリカは北朝鮮側との対話を諦め、すでに国民がサポートし、メディアや議会も“やむなし”と考えているとされる対北朝鮮攻撃が現実味を帯びてきます。

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