交渉のプロが解説。米が北を攻撃しても中ロは非難に留まる理由

 

「東南アジア~中東」でくすぶる懸念

【タイ新南部のポンドゥック】

以前、本件の状況については詳説し、後日、マレーシアのマハティール首相のイニシアティブで、解決に向けた協議をタイ政府やインドネシア政府とともに進めるとの情報があり、期待を抱いたのですが、残念ながら肝心のポンドゥック側のリーダーシップが明確にならず、協議の相手が絞れないとの状況になってしまい、争いが収まる気配がありません。

以前にもお話したように、被害に遭っているのが女性や小さな子供ですので、国際的な人権団体からの非難対象になっています。長年、ポンドゥックに対するタイ国軍の迫害が取り上げられてきましたが、今回は“解決”のため、これまで無関心を貫いてきたマレーシアとインドネシア両国も軍を派遣する可能性が浮上してきました。ただ、問題は、その対象が誰なのか?

ポンドゥックは、マレーシアに端を発するイスラムの教育を行う学校組織ですので、同胞イスラムに攻撃を加えるとは考えづらいことと、一応、タイの領土内に位置するため、マレーシアおよびインドネシアの軍の派遣は、また別の地域的な緊張の高まりを生む可能性を秘めています。

【中東地域における緊張の高まりと紛争勃発の恐れ】

この地域における緊張の“主役”はイランです。長年の緊張関係を保つイスラエルとイランの刮目、イエメンでの“代理戦争”を戦うサウジアラビアとイラン、そして、トランプ大統領が執拗なまでに執着するが故のアメリカとの対立など、イランが台風の目になっています。

つい先日には、イスラエルがシリア・ダマスカス国際空港内にあるとされているイランの軍事組織の拠点を爆撃しました。これまでにも何度か行われてきた空爆ですが、今回初めて、イスラエルのネタニヤフ首相が公式に発表するという異例の事態となっています。裏には「仮にアメリカ軍が撤退しても、イスラエルはイランの好きなようにはさせない」との意思表示と取ることが出来ますが、イスラエルとイランは、シリアのような第3国での軍事的な衝突の恐れだけではなく、常に直接戦争に至りかねない緊張関係を保ってきました。

公には認めていませんが、両国とも核戦力を有し、それぞれのミサイルの弾頭は、それぞれの首都や主要都市に向いていると言われています。これまでは、その緊張をバランスするために、トルコにあるNATO軍基地に、双方を向いた核ミサイル(もしくは、その迎撃システム)が配備され、もしもの際には、2国間での戦争を無力化するためのシステムができていました。

しかし、昨今のトルコとアメリカの微妙な緊張感から、トルコ国内に置かれているといわれているそのバランサーとしての核の影響力には疑問符が付くようになり、すでに機能していないとの見方もあります。以前に比べて、イランとイスラエルの直接戦争の可能性が高まっています。

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