惣菜・弁当の人気の高さは「セントラルキッチン」にあり
成城石井にもう1つ特徴的なのは、自社でセントラルキッチンを持っていることだ。全店舗の惣菜、弁当の大半はセントラルキッチンで製造している。
一般的にスーパー、コンビニのPB(プライベートブランド)商品は、惣菜、弁当にしても多くは委託された外部のメーカーが製造しているのに対して、差別化がなされている。
通常のスーパーでは惣菜、弁当の販売比率は1割ほどと言われるが、成城石井は店によって異なるが2~3割を占めていて期待値が高い。年齢層では30代と50代のニーズが高く、20代と40代はむしろスイーツのほうが人気だそうだ。
しかも、成城石井のセントラルキッチンは、レストランで働いていた調理人が製造に携わっており、惣菜開発にあたっている。だから、普通のスーパーと違って、レストランに負けない味が出せるのである。工場というよりも大きな厨房といった雰囲気で、一部機械も使っているが、手づくりを基本としている。
前出のモーモーチャーチャーも、ハンバーガー用バンズも、それぞれその分野のプロが開発し、セントラルキッチンでつくる商品である。
「プレミアムチーズケーキ」は年間100万本弱と成城石井で最も売れる商品だが、これも名店「マキシム・ド・パリ」で修業していたパティシエによる、渾身の作である。
最近では、トリュフの香りがするトリュフチョコレートの人気が高い。
ポテトサラダに使うジャガイモは、皮ごと蒸して、人の手を使って皮を剥いている。機械を使わないので、皮のすぐ下にある旨味が凝縮された部分を商品化することができる。原料が同じでも、成城石井ならより品質の良い惣菜を提供できるのだ。
4つの醤と四川山椒、国産豚肉を使った、四川風ピリ辛麻婆豆腐も本格的な味だと評価が高い。
「本当にレストランの厨房が大きくなったような感じで、驚くほど手作業でつくっていますよ」と五十嵐氏は重ねて強調した。
メーカーに委託してつくってもらう場合にも、たとえばごまドレッシングの場合には、ごま、油、醤油など、各原料にもっとこだわってスペックを上げてもらう。多くのスーパーでは、出回っている既成の商品のラベルを張り替えて、OEMのような形でPB化しているケースも多いのに対して、成城石井の場合は「オリジナル商品」と呼んで区別している。
牛乳も、通常は130℃とかの高温で2秒の殺菌を行うが、成城石井のは65℃で30分の低温殺菌を行っている。そのため手間はかかるが、牛乳が焦げたにおいから来るいわゆる牛乳臭さがなく、とても飲みやすい。また、低温殺菌牛乳では値段もリーズナブルだ。
成城石井は、世界のおいしさそのものを食卓に届けることにこだわり、物流やセントラルキッチンの充実、駅ビルへの出店と、他のスーパーがやらないこと、できないことに挑戦して結果を出している。
さらに店舗数が伸びた時に、第2の物流センター、セントラルキッチンをどうするのかという問題はあるが、当面は安定した成長が見込めるだろう。