日本企業に蔓延する「ビジネス謎ルール」が国の衰退を加速させる

 

こうした「謎ルール」の中でも、私が非常に心配しているのがハンコの押し方です。日本独特の文化としてハンコというものがあります。特に会社の中では稟議書とか回覧決済などと言って、多くの関係する部署の担当者がハンコを押し、最後に管理職や役員など「順番に偉い人」がハンコを押して決済する仕組みがあります。

何よりも、そのように紙を回してハンコを押すということ自体が古いし非効率です。ファックスやPDFでなく原本を回している間にビジネスチャンスは消えてしまうのが現代と思うのですが、百歩譲って、これは仕方がないとしましょう。

問題は、下役は上司に対して「お辞儀をしている」ように、「ハンコを上司の決済欄の方へ傾けて」、しかも「下になるにつれて傾けて押す」という「謎ルール」が生まれているとうことです。

飲み会の謎ルールはまだ笑って済ませられるところがありますが、このハンコを傾けるというのは、問題です。これはダメです。とにかく、そんなことを有り難がる上司がいるというのでは、正しい判断のできる会社なのか心配になります。特に、お金の絡む決済書類であれば、捺印というのはイコール「承認と統制という法律行為です。

例えば、統制というのは、要するにチェックです。誤りはないか公私混同はないか法律違反はないかを確認する法的責任が伴う行為です。統制が不要なら、起案者である若手と、決済者である部長や役員だけがハンコを押せばいいのですが、その間に課長とか係長のハンコが必要なのは「統制つまりチェックのためです。

にも関わらず、係長が最終決済者の部長や役員のことを気遣ってハンコを傾けるというのは、そこにソンタクや不正の入る余地がある、そう感じざるを得ません。一番そういうことをやってはいけない金融機関などで、この「ハンコのお辞儀」が広まっているという話を聞くと、もう日本オワタという感じがします。

それにしても、どうしてこうした「謎ルール」ができるのでしょうか?

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