100円ショップの限界。なぜ業界2位セリアの成長は止まったのか?

 

売り切れの品が続出。熱心な女性ファンがセリアに殺到する理由

セリアは2004年に100円ショップ業界初の「POSシステム」を導入し、06年にはそれを活用した「発注支援システム」を構築。同社ホームページの河合英治社長のあいさつによれば「お客様支持に基づく最適な品揃えとオペレーションの簡素化を実現」した。

そのビジネスモデルの象徴として、「Color the days 日常を彩る。」というブランドプロミスを掲げている。

店舗数は、今年1月末現在で、1570店(直営:1521店、FC:49店)となった。

女性をターゲットとして、デザイン性を追求した商品が並び、インテリア、食器、台所用品、ガーデニング用品、収納用品、手芸用品などに強い。半面、食品を扱っていない店舗が多い。

セリア店内の様子

セリア店内の様子

商品の傾向としては、100円ショップの実用型商品の域を超越した、見た目のかわいらしい愛すべき商品が多い。子供と一緒に家族で楽しめるキャラクター商品やパーティーグッズも揃い、近年はショッピングセンターや大型スーパーの集客の鍵を握るテナントとして、重宝されるようになっている。

DIY向きの商品が充実していることからも、女性向けホームセンターのカテゴリーキラーのような独特の立ち位置にある。

セリアのファンの中には毎日のように店に行っては、発見したお気に入りの商品をSNSにアップする、“セリア・パトロール”と呼ばれる購買行動を行う、熱心な常連客のインフルエンサーが多数存在している。セリア・パトロールによってSNSで拡散された商品は、インスタ映えすることもあり、その情報を見た人が店舗に殺到して売り切れることもしばしばで、欠品となっている商品が増えている。

セリアを悩ませる、人気商品にのみ客が集中する「負の一面」の顕在化

欠品を出さないことに関しては、セリアが最も注力していることの1つで、取り扱いアイテムを約2万点としている。その中で月間400~600の商品を入れ替えて、常に売場の新鮮さを保っている。

2万点もの商品があるのだが、「ダイソー」のアイテムは約7万点であり、100円ショップにしては絞り込まれている。「ダイソー」の3割程度の商品数で成長してきた、製造コスト面の優位性があるのだ。

ところが、セリア・パトロールで何が人気になるかは、出してみなければわからない。同じアイテムで、ある色、黄色なら黄色ばかりが売れる場合もあり、データベースをメーカーと共有して、なくなりそうになったらつくる体制を構築しても、即座の補充が難しいケースも出てくる。

もちろん、SNSで購買意欲をかき立てられ、お店に買物に訪れた顧客は、お目当ての商品が売り切れていたならば、がっかりするだろう。
そうしたことが何回も続けば、別にセリアでなくてもという人が出てきてしまう。

競合のダイソー、キャンドゥ、ワッツなどでも、特に300円など、100円以上の高価格の商品でデザイン性を高めており、わざわざセリアの他店まで行ってあるのか、ないのかもわからない商品を探し回って交通費、ガソリン代を使うより、300円ショップでいいという人も増えている。

セリアを悩ます、既存店顧客の減少、1人当たりの購買商品点数の減少は、皮肉にもセリアの商品の優秀性によって生み出された、セリア・パトロールと、SNSに投稿されたインスタ映えする商品に人気が集中する現象の負の一面が顕在化したものである。

セリアは顧客などの情報の分析に長け、それを商品に具現化する発想の秀逸さで成長してきたが、突発的に起こるSNS起点の怒涛の如き集中的購買行動は、いくら分析してもどうなるものでもない。

売れて商品がなくなった時のメーカーと連携した補充力ばかりでなく、補充されるまでにいかに顧客をつなぎ止めるか、説得性ある弁明力が問われている。

売場を見る限り、欠品がいつになったら補充されるのか、何の情報も弁明もない。

たとえば、食品スーパーの「OKストア」ならば、店員が手書きで代替商品の案内などをするが、そういう機転がない。特に人気の商品の欠品情報くらいは、店頭掲示板で告知できないものか。

商品は魅力的で素晴らしいが、社風が親切でないように顧客から感じられてしまっている点が顧客離れの原因である。

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