国際交渉人が警戒。アルジェリアの政変が地域にもたらす変動の嵐

 

そして3つ目は、高まる国家安全保障上の危機です。最近のニュースでは、ISISの危機は去ったとの情報もありますが、それはあくまでも“シリア”“イラク”に限った話であり(といっても真相は??ですが)、その他の国ではまだまだ勢力を保っているか、増殖しています。その一つがアルジェリアと言われています。

その理由は、カダフィー大佐が民衆に惨殺されて以降、リビアでは無政府状態が続いていますが、そこに北アフリカ地域に勢力を伸ばすISISの中心が移ってきています。そのリビアの隣国ともいえるのが、アルジェリアです。

これまでは、現在大統領代理を務めているベンサラー将軍率いる国軍の健闘もあり、アルジェリアにおいては大規模なISISによる攻撃は起こっていないとされていますが、2016年あたりから激化しているアルジェリア南部にある炭鉱町を舞台にした武力衝突背後には、ISISの戦士たちがいるとされています。

イラクに展開していたISIS勢力がイラクから駆逐されたとされる今、その残存勢力がリビア周辺に集まっています。今年に入ってから、ブテフィリカ氏の求心力の著しい低下と、民衆の不満の爆発、立ち行かない経済といった諸事情もあり、“生存を求めてISISと与する”という流れがあるように聞いています。

また、治安部隊や警察に対して、給与支払いが滞っているようで、次々と人員の離反が進んでいるようで、国内の治安状態の悪化は著しく、もう国軍の力では抑えきれない状況になっているようです。

もし、アルジェリアが近々、倒れるようなことが起きると、モロッコやチュニジアという周辺国はもちろん、北アフリカ地域と中東をつなぐ大国エジプトも一気に倒れ、その悪影響はドミノ倒しのように中東全域に広がりかねません。もうすでにシリア、イラクは言うまでもなく、イエメンなどでも惨憺たる状況が広がっているわけですから。

では、それを防止するにはどうすればいいのでしょうか。これまでであれば、私も何度も持ち上げたように、地域のバランサーであり、経済・安全保障面でもリーダー格のトルコの出番となっていたのですが、そのトルコをめぐる状況も微妙な状況に陥っています。

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