あえて今遡る。昭和の年金の話を聞けば、なぜ年金が必要かわかる

 

そして、この昭和60年改正にて国民年金をどんな職業であれ共通の給付の部分として加入させて基礎年金を導入し、その基礎年金の上に厚生年金や共済年金のような報酬に比例する年金を支給するという今の年金の形の骨格を作った大手術をした改正でした。

国民年金は主に自営業の人や農業の人などの、会社で雇用ではない人が加入するものとして昭和36年4月1日から始まりましたが、時代の変化と共に会社に雇用されるという人が急激に伸びていき、国民年金の被保険者が少なくなっていきました

被保険者が少なくなるという事は支え手が少なくなって財政が厳しくなるという事です。産業構造も自営業から雇用の方向へと変化し始め、自営業者が主な支え手だった人が少なくなり、国民年金財政が厳しくなってきました。だからもう職業に関係なく、共通の年金を作るためにも基礎にあたる年金を導入して、将来はどんな人でも基礎年金を受給しようという形を作ったのです。つまりサラリーマンであろうと、公務員であろうと国民年金に加入しようと。

そしてその国民年金の財政はそれぞれの被保険者で頭割りで負担していこうねと。頭割りっていうのは例えばタクシー代が1万円で、4人居たらそれぞれ2,500円ずつ出してもらうという事。

例えば今の基礎年金の給付費は20兆円ですが、その半分の10兆円は税金です。残りの10兆円を各被保険者数に応じて負担してもらう。これにより、国民年金は産業の変化に影響を受けずに安定した制度運営が可能となった。給付水準もなんとか60%台に留まり、保険料ピークもなんとか社会の暗黙の了解だった年収の30%以内に留まり、国民年金も安定したものとなった。

ところがです。この時は昭和56年の将来人口推計22.2の%(高齢化ピーク)を用いてのものだったんですが、昭和61年将来人口推計は上方修正されて24.2%に上がってしまいました。先ほどの保険料では収まらない事になっていくんですね。

そして平成の時代を迎えます。昭和64年1月7日に昭和天皇が崩御し、平成元年となり当時の明仁皇太子殿下が天皇に即位しました(即位の礼は平成2年11月17日に行われた)。

平成の始まりはまだバブル景気に沸いていた時期でもありました。平成元年12月最後に日経平均株価38,915円の最高値を記録し、翌年からは4万円超えか!?といわれましたが、そうはならなかった。バブルはその名の通り泡のようなものであり、近いうちに弾けてなくなるものであります。

ちょっと年金の話に移る前に時代背景をお話しします。

昭和60年に竹下登大蔵大臣(平成初めの首相でもある)がニューヨークのプラザホテルにて、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ(1900年に東西ドイツ統一)の先進国が集まり、ドルを安くしようという方向に決めた。これをプラザ合意といいますが、ここから日本は急激な円高となっていった。1ドル=240円くらいあったのが、1990年には120円まで円高になってしまった。

こうなると日本の輸出産業にとっては大打撃になってしまう。なんでかというと日本商品がアメリカで売れなくなる。例えばアメリカで5ドル出せば2240円×5ドル=1,200円のものが買えていたのが、120円まで円高になった事で今まで1,200円のものが5ドルで買えたモノが10ドル出さなければならなくなる。

120円×10ドル=1,200円になるから、アメリカとしては今まで5ドルで買えたモノが10ドルも出さなければならなくなるという事ですね^^;日本では値段が変わらなくても、あっちの国では値段が高くなってしまう。

となるとアメリカ人は日本商品を買わなくなってきますよね。日本の景気が悪くなるから、日銀が公定歩合(今は公定歩合はないです)を引き下げます。公定歩合というのは日銀が銀行に貸す時のお金の金利の事。公定歩合が引き下がると各金融機関がお金を日銀から借りやすくなります。そして銀行が日銀から借りたお金で、安い金利で企業に貸し出す。そうすると企業にお金が潤うから、設備投資や雇用が増えて景気が刺激される。景気を良くしようと日本にお金がジャブジャブになっていきました。ジャブジャブになっていきながら、円高になった事で海外の商品が安くなったから日本で沢山海外のものが売れるようになり空前の消費ブームも起こって好況になった。

そして企業の中には本業以外でも儲ける事を考え始めるわけです。そのお金が土地や株に流れていったんですね。多くの人が土地や株に走るから、みるみるうちに値段が上がるわけです。銀行からお金借りて、そのお金で土地や株を買う。土地や株を買ったらすぐに値上がりするから売って儲けを得る。財産を増やすテクニックといって「財テク」という言葉も流行してましたよね。当時は東京23区の土地代でアメリカ全土が買えるとも言われました^^;

しかし、日銀がバブルを止めるために公定歩合の引き上げを2.5%から徐々に6%まで引き上げていき、更に銀行が不動産会社にはお金を貸すのを規制するようになった。だから今までのように土地や株を簡単に買い占めれなくなってしまった。買ってもらうためには値段を下げないといけないですよね。しかし銀行から借りたお金よりも、土地や株の値段が下がった状態で売ってしまったら残るは借金だけ。この投資家の借金(不良債権という)が銀行にとって莫大なものとなってしまった。投資家に貸したお金が戻ってこないから不良債権。

銀行の経営が悪化します。銀行の経営が危うくなってきたので、今までのようにはお金が貸せなくなりました。バブルは平成3年に終わり、平成は長い長い不況に入ってしまったんですね。これを失われた10年とか失われた20年とも言います。実際は今もそんな感じなので失われた30年かもしれません^^;

 

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