あおり運転の厳罰化は?見直されるべき「時代にそぐわぬ」法律

 

これと似たような話は、大きな制度変更の際に起きる現象です。もうすぐ、恐らく10月1日から消費税率が8%から10%にアップされます。そこで複雑な軽減税率制度がスタートします。そうなると、財務省はいつものように多額の税金を使って「みなさん、お間違えのないよう」と「新制度の告知」を始めると思います。

これも主権者をバカにしています。制度が複雑で問題があるのなら、審議の途中で複数案を有権者に問うべきです。そして問題点、論点については、国政選挙などを通じて賛否両論の論争という形で社会的によく知られるようにすべきです。

そうした努力はしないでおいて、法律が実施される時になって「ご存知でしたか?」とか「違反をしないように」などと告知をする、これは本当におかしな話です。民主主義とか立法権とか間接民主制ということがキチンと機能していないとしか言いようがありません。何よりも、主権者が主権者として認識されていないのです。

急ブレーキだけが違法というのは不自然です。法律を見直した方がいいと思います。スマホのホルダーはどこに設置しても違法というのは、不便ですし、21世紀の現在極めて使い勝手の悪い法律だと思います。妙な警告記事がビューを稼ぐのではなく、主権者として法律のアップデートを主張しその上で社会全体が法律の使い勝手をちゃんとメンテナンスしている社会になることが大切です。

考えてみれば、訳のわからない書類に面倒な書き込みをさせられて、「法律なので仕方ありません」とか、どう考えても悪質な犯罪なのに「処罰する法律がない」ので見逃されるとかいうような問題も多くあると思います。

民事や行政がらみの実務的なものから、犯罪抑止に至るまで、法律は大切です。守らなくてはなりません。ですが、民主主義国の主権者というのは、法律を守りつつ、使い勝手の悪い法律は自分たちの意思で変えていくそのための権利を有しているのです。その権利をどう行使していくのかを教えるのが主権者教育ではないかと思うのです。

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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