数十年に一度とも言われる大雨を伴い日本に上陸し、列島に多くの被害をもたらした台風19号。その影響により事業再開の目処が立たないといった事業者の声も多数聞かれます。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、そんなケースで活用できる特別措置等を紹介しています。
台風19号被害への対応について
台風19号によって、広範囲にわたって甚大な被害が発生しています。水害等の被害を受けた事業所もあるでしょう。しばらくの間、事業再開のメドが立たない事業所もあるでしょう。このような時、雇用保険制度の特別措置や雇用調整助成金を活用できる場合があります。
雇用保険の特別措置とは、災害によって事業を休止・廃止したために一時的に離職した従業員に対して、事業所の再開が予定されている場合であっても、従業員が失業保険等を受給できるものです。台風15号による災害や台風15号の影響による停電で事業所を休業した場合には、弾力的に対応することになっています。おそらく、台風19号の被害についても同様に、弾力的な対応がされるでしょう。
また、台風15号の被災事業所については、労働保険の納付猶予措置が受けられます。台風19号での被災についても、同様の扱いがされるでしょう。労働保険の納付猶予のためには申請が必要となります。申請時には、「納付猶予申請書」と「被災明細書」を、労基署または都道府県労働局保険徴収室に提出し、内容審査を受けます。
次に、雇用調整助成金についてお話しします。雇用調整助成金とは、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な休業等を行うことで雇用維持を図る場合に、休業手当や賃金などの一部を助成するものです。この雇用調整助成金が、今回の台風19号被災事業所で活用できる場合があります。詳しくは、ハローワークへお問い合わせいただくのが良いと思います。
また、今後、復旧作業に伴い、残業や休日労働が増加する事業所もあると思います。その時に、36協定で締結した残業時間や休日労働の上限を超えてしまう可能性もあるでしょう。この場合、労基法33条に基づく協定を締結・届出ることで、36協定の内容を超えた残業や休日労働が可能となります。
この届出は「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」といいます。労基法33条第1項または第2項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後に届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。ただし、労使協定の締結は必要ありません(もちろん、残業代等の支払いは必要です)。特に、電気・ガス・水道・通信や道路・鉄道のライフラインの復旧に携わる事業所については、今後、残業や休日労働の増加が予想されます。ぜひ、こういった届出があることを覚えておいてください。
また、台風による休業については、第279号「台風で電車が運休・遅延した場合、会社は賃金の補填をするべきか」も参考にしてください。
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