先日千葉市に上陸した台風15号は各地に大きな被害をもたらし、首都圏の輸送網にも大打撃を与えました。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、当日の出社や欠勤、台風被害による事業所の休業等を巡り様々なお客様から受けたという質問を取り上げ、それらに答えてくださっています。
台風被害による休業手当の支払いについて
9月9日に関東地方に上陸した台風15号によって、私の住む東京では、電車の運休や遅延による混乱が起きました。千葉県などでは、建物の損壊や長期間の停電などの被害が発生しています。ところで、この台風の後、お客様から多くの質問が寄せられました。その質問に答える形で、今回はお話ししていきます。
一番多く頂いたご質問は、
電車の遅延や運休によって、遅刻や欠勤した従業員の賃金を補償しなければならないか?
というもの。基本はノーワークノーペイです。したがって、働いていない時間について賃金を支払う必要はありません。電車の遅延や運休については、会社に責任はありません。完全な不可抗力です。ですから、労基法26条に定める休業手当の支払いも必要ありません。
しかし、今回のような場合、通常の欠勤と同様に扱っては、従業員に酷なようにも思えます。賃金や休業手当が支払われないことで、従業員の不平や不満にもなります。
そこで、会社として対応が可能であれば、電車の遅延や運休による遅刻・欠勤について、事後的な年休申請を認めるといった対応をされては如何でしょう。
遅刻・欠勤について賃金控除をしないという対応では、この台風の中きちんと出勤してきた従業員とのバランスが取れません。ですから、今回については、事後的な年休申請を認めたり、あるいは遅刻・欠勤者の賃金控除をしない代わりに、きちんと出勤してきた従業員に対しては特別な手当を支給する等の対応が良いと思います。ただし、これはあくまで、会社の任意的な対応という事になります。
次に多かったご質問として、
事務所や工場が台風により一部損壊したり、あるいは浸水によって稼働することができないので従業員を休業させたが、賃金の補償は必要か?
といったもの。天災事変等の不可抗力による休業の場合、休業手当の支払い義務はありません。ですから、就業規則等で「天災事変等による休業の場合でも何らかの手当を支払う」といった規定がない限り、賃金や休業手当を支払う必要はありません。
では、施設や設備が直接的な被害を受けてはいないが、取引先や道路等の被害によって、原材料の仕入れや製品の納入等ができず、従業員を休業させる場合はどうでしょう。この場合、原則は、休業手当の支払いが必要です。しかし、取引先への依存度や輸送経路の状況、他の代替手段の可能性等によっては、「使用者の責に帰すべき事由」に該当しない(休業手当の支払いが不要)場合もあり得ます。
ただし、この判断には明確な線引があるわけではありません。それぞれの事案ごとに、個別の状況によって判断することになると思われます。
また、休業手当の支給について、雇用調整助成金を活用できる場合があります。助成金活用を考えている会社は、一度、ハローワーク等へ問い合わせ・ご相談されては如何でしょう。
今回は以上となります。
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