ロシアでさえ国家破綻か。新型コロナが世界にもたらす3つの危機

 

そして3つ目は、このような状況が、コロナウイルスの感染拡大に晒され、経済基盤から覆されかねない新興国・途上国の経済を容赦なく襲っていることで起きる途上国の同時多発デフォルトです。

例えばロシアでは、先述の通り、すでに23万人の感染者が国内におり、その数は米国に次ぐ数になっていて、モスクワの病院の門から救急車の長い列ができるほどの医療体制の崩壊を招いていますが、年率で4%から6%のGDPの低迷が予測され、すでに4月だけで140万人の失業者が出ている状況で、プーチン大統領は「人命か経済か」の究極の選択に迫られています。操業禁止の期間を終え、様々な経済活動の再開に舵を切ったようですが、お世辞にもコロナウイルスの感染拡大を効果的には抑えられているとは言えない状況でのギャンブルは、支持率の低迷につながり、それがロシア経済の安定性への疑念にもつながっています。

OPEC Plusに対して仕掛けた原油の協調減産拒否以降、4月まで続けてきたチキンレースでロシア経済が著しく傷んでいるところに、コロナウイルスの感染拡大が重なり、ロシア政府の財政の持続可能性は著しく低下しているとIMFは懸念しています。

もしコロナウイルスとの戦いが長期戦になる場合(そして恐らくそうなる)、ロシア経済もデフォルトの危機に直面することになります。

コロナウイルスの感染拡大が引き起こした米中対立の激化は、東南アジア諸国の新興国をさらに痛めつける結果になってきています。3年にわたって続く米中貿易戦争によって被害を受けたように、米中対立の激化は東南アジア諸国に悪影響を及ぼし、コロナウイルスの感染拡大による直接的な損失に追い打ちをかける状況になっています。

そして中国にとっても大きな誤算を引き起こしています。一帯一路政策を通じて経済的な覇権を広げてきた中国政府で、これまで重度の債務を負わせることで中国の影響力を拡大するとも批判された作戦を見直さざるを得ない状況を引き起こしています。バングラデッシュに端を発し、多くの支援国から債務返済の猶予を要請され、受け入れられない場合は一帯一路から離脱し、欧米諸国や日本への支援に切り替えると迫られ、習近平政権が大きなジレンマに直面しているようです。中国が対応を誤れば、大きな変動がコロナ後に起きるかもしれません。

同様に感染が止まらないブラジルやそのとばっちりを受けるアルゼンチンといったラテンアメリカ諸国でも財政赤字の拡大が止まらず、コロナ以前にすでに悪化していた経済状況を致命的なレベルまで悪化させる状況になっていると、IMFが懸念し、両国をデフォルト寸前のwatch listに入れたとの情報が入ってきました。

このラテンアメリカ諸国における2大国が倒れるようなことになると、そのドミノの波は一気に全域に広がることになり、財政破綻に陥る国が続出することになるでしょう。この地域の経済の脆弱性は、before Coronaからの特徴・懸念ではありますが、これが恐らくさらに弱体化し、大きな懸念の種になってしまいます。

そして先述のように、今、アフリカ大陸は感染爆発の寸前で、年初のバッタによる農業被害に追い打ちをかけるように、各国の経済をコロナが蝕んでいます。

WHOの事務局長テドロス氏の出身国エチオピアは、その歳入の7割を農業製品の輸出から得ていますが、コロナは例外なくエチオピア経済を蝕んでいます。

またアフリカ最大の経済国南アフリカも、広がる感染に歯止めが効かず、経済活動が実質的には成り立っていないと言えますし、比較的裕福と言われる北アフリカ諸国でも、すでに始まっていると言われる感染拡大により、活動が完全にマヒしています。

この北アフリカの“危機”は、以前お話ししたように、欧州経済の労働力の供給元の崩壊を意味しますから、その影響がどれほど大きくなるかはお分かりになるかと思います。

何処を見ても希望が持てる状態ではないという現状は、新興国通貨の下げ圧力が増加しており、5月14日付のBloombergの分析によると、29か国がコロナdefaultの危機に瀕しており、その中でもインド、インドネシア、南アフリカ、ブラジル、トルコ、アルゼンチンはかなり危険だと言われています。1997年から2000年にかけて大規模な経済危機が引き起こされ、2008年には、世界経済はリーマンショックを経験しましたが、30か国近くがデフォルトすると懸念される状況は、今までに経験したことがないダメージを世界経済に与えることになるでしょう。先進国も例外なく被害を受けているCOVID-19のパンデミックは、世界経済システムの崩壊の予防さえ阻む可能性があります。

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