このような時こそ国際協調・共助が必要となるのですが、すでにそれは絵に描いた餅で実際には機能していないことはすでにお話ししました。
しかし、COVID-19という共通の強敵を前にワクチン開発と治療薬の開発という分野では希望が持てる動きもあります。ワクチン開発や治療薬の開発は各国で急ピッチで進められ、政治的な意思とは別に、医療関係者や専門家間のネットワークで頻繁に情報やデータがシェアされていることでスピードは加速しています。日本でも異例のスピードで認可されたレムデシビルやアビガンの使用もその例です。これはコロナウイルスの脅威というのもありますが、医療物資を巡る安全保障上の懸念、特に流通網がマヒする中で調達を困難にしている状況や、統合を旗印にしているはずのEUにおいて、イタリアでの感染爆発時にフランスやドイツが医療品の輸出・提供制限を行ったという事実を受けて、政治的な駆け引きをすっ飛ばした安全網の確保という動きにつながっています。
今後、アメリカ、欧州各国、日本、中国という4極で一気にコロナ市場・マーケットチャンスが創出され、拡大されることとなりますが、その効果をフルに享受するためには、政治的・地政学的な思惑からいかに離れられるかがカギになります。
そういう点で18日から開催されるWHO総会に、コロナ対抗について経験と知見を有する台湾が参加できるか否かというポイントは、今後の運命を左右する出来事ではないかと考えます。
さて、これまでいろいろな側面からお話しをしてきました。ゆえにちょっとフォーカスがぼけてしまったなあと反省していますが、最後に私の“予測”をご紹介します。
新型コロナウイルス感染拡大は世界に大きなショックを与え、そのショックは多くの悲劇も生みましたが、同時に平時では成し得ない様々な変化・シフトの可能性を世界に与えました。武力衝突の際と同じく、コロナとの世界戦争の最中にはなかなか希望を見出しづらいのですが、新しいワークモードへの変換、働き方改革の進展、医療や公衆衛生部門における世界的なレベルアップと協力強化、エネルギーシフト…様々な希望の種が生まれています。
今回のコロナウイルスの感染拡大の収束が迅速に訪れるのであれば、その希望の種が芽を出し、やがて実を結び、本格的な社会的な変革を多重的にもたらすのだと思います。
しかし、今、WHOをはじめ、医療・公衆衛生のコミュニティが予測する内容は、もしかしたらそのような希望の種のいくつかを殺してしまうかもしれません。例えば、5月14日にCNNやBBCが世界に伝えましたが、WHOの専門家の見立てでは【コロナウイルスがなくなることはなく、感染が収束することもない】とのことで、それはつまり、コロナウイルスの感染拡大との戦いが想像以上に長期化することを意味するのだと考えます。
その一例が、ICAOが出した「世界の航空需要が回復するのは、早くても2024年になるだろう」という見通しが言い表しているように思います。
そして、変わり得たものはすべて元通りの形に戻ってしまうか、さらに退化するbacklashを齎(もたら)し、それは世界の分断を加速させることになるのかもしれません。
これまで非常にスピーディーかつ大規模なグローバリゼーションは、世界のつながりを深め、経済的な成長を一気に加速させてきました。同時に経済や資源の相互依存構造を確立してきました。今回、コロナウイルスの感染拡大によりすべての動きと“つながり”が強制的に絶たれた中で、各国は、そして私たちは、【いかに自分がいるところで、自力で生きていくか】という方法について真剣に考え直すことになりました。
食糧供給網やエネルギー供給、国境を越えた人々の自由な移動が支えてきた経済活動という体系を見直し、自らのコミュニティ内で完結する生活様式の模索へと関心が移るのかもしれません。
移動が制限され、Face-to-Faceのつながりが絶たれる今、私自身、“新しいAfter Coronaの世界”にどう向き合っていくべきか、正直、戸惑っています。
皆さんはどう向き合われますか?
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