「石破は嫌」しかない自民党の病理。菅義偉政権が日本の未来を破壊する

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安倍首相の辞任から一転、派閥の論理という「密室政治」で瞬く間に確定してしまった「菅義偉」政権。国民どころか自民党員ですら蔑ろにされた感のある、この自民党総裁選の茶番劇について、安倍政権を厳しく論じてきたジャーナリストの高野孟さんは、自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、二階幹事長の巧妙な策略を暴露するとともに、菅義偉官房長官が「永田町の都合で」首相の座につくことが決定的となったこの国の不幸を憂いています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年9月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

こんなふうにして自民党は時代から取り残されていく

安倍晋三首相が仮に、失政を批判され総選挙で大敗したとか、スキャンダルで身動きもとれなくなったとかで辞任表明したのであれば、第2次安倍政権7年8カ月の全期間を官房長官として支えてきた菅義偉氏は安倍氏と一緒に真っ先に辞めるべき存在であって、後継者になれるはずがない。たまたま安倍首相の辞任理由が病気であったために、菅氏にもチャンスが転がり込んできたのである。

麻生氏の臨時代理でもよかったはずが

とはいえ、病気辞任の場合に最も自然かつ無難で何の「政治空白」も生じないのは、麻生太郎副首相が来年9月までの1年間、臨時代理を務め、その時点で本格的な総裁選を実施するというコースであったはずではないのか。内閣法は第9条で「内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う」と定めていて、その予め指定された職務代行者を俗に副総理、副首相と呼んでいて、それが麻生氏だからである。

安倍首相も最初はそうするつもりだったようで、8月に入った頃から何度も麻生氏と2人だけの時間をかけた会談を行なっている。が、この案は不採用となった。最大の理由は麻生氏の年齢で、今年9月20日で80歳となる彼は、たとえ1年間でも臨時代理を務める体力・気力を維持するのは容易でなく、まして来年9月の総裁選に立候補してその先も政権を続けることなどあり得ない。とすると、その総裁選は岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長を軸とした戦いとなり、石破氏が勝つ可能性が出てくる。それが安倍首相も麻生氏も死ぬほど嫌なのだ。そこで、岸田氏への政権引き渡しという既定路線で行くことになった。

やっぱり岸田氏への政権譲渡にしようとしたが

自民党の派閥は現在、大きい順に、安倍首相が実質的に率いる細田派98人、麻生派55人、竹下派54人、二階派47人、岸田派47人、石破派19人、石原派11人、菅派9人、無派閥41人。最大派閥の細田派と、麻生派を中心に岸田派・谷垣派の旧宏池会系の3派が手を組めば215 人で、国会議員票では岸田氏が圧倒的に優勢になるのはもちろんのこと、地方票でもかなり善戦に持ち込めるという計算だった。

ところがそこで動き出したのが二階俊博幹事長で、81歳になってもまだ色気満々。このまま岸田政権となれば自分が幹事長を外されることは確実なので、無派閥の菅氏を二階派が担いでそれを細田派も麻生派も、竹下派までもが支持せざるを得なくなるように仕向けるという奇策を用いて、一気に政局の主導権を握った。安倍首相と麻生氏がこれに簡単に引っかかったのは、「岸田で本当に石破に勝てるかな?」という心の奥底にある恐怖感を二階氏に見抜かれたためである。

しかも二階氏が巧みなのは、事実上の派閥ボス間の「密室談合」による政権作りであるにもかかわらず、その批判をかわすために総裁選は形ばかり実施することにし、さらに念の入ったことに、それで石破氏が活躍することがないように、大掛かりな地方票の投票を避け(政治空白は許されないだと?)各都道府県3票ずつの簡略化された新方式を編み出すという芸の細かさである。

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