日本全国で「クマ出没」注意。いま山の中で何が起きているのか?

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いま日本各地でニュースとなっている、住宅地への「クマ出没」。襲われた人も少なくない中で、これほどクマが山から降りてくる背景には何があるのでしょうか。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者で、ジャーナリストの内田誠さんは、朝日新聞が今まで報じてきたクマ出没ニュースの中から、「餌不足」というキーワードに注目。過去記事の検索結果から見えてきたきたのは、クマの餌であるドングリの木「ブナ」の不作という事実でした。

「クマ出没」と「ブナ不足」の関係を朝日新聞はどう報じたか?

きょうは《朝日》から。1面トップに「クマ出没」に関する記事が掲載されています。例年とは違う何かが起こっているのかもしれません。

「クマ」だけでは間違って検索される例がたくさんありそうですので、「出没」で絞って検索してみると、サイト内に208件、新聞記事検索(1年分)では78件でした。サイト内で一番古い記事は2015年10月のものでした。「例年と今年の違い」を見るためには、1年ではダメなので、サイト内の208件がとりあえずの対象に。

ですが、背景の1つが餌不足。例年、冬眠に備えて大量にブナの実(ドングリ)を食べるが、このブナが不作だとクマは腹を空かせて人里に降りてくるといいますので、検索語に「ブナ」を付け加えてみると、サイト内に48件ヒットしました。これらを見ていきましょう。

まずは1面トップ記事の見出しから。

クマ出没 街中まで
石川の商業施設に侵入■新潟・秋田は警報
過疎や高齢化 広がる生息域
ドングリ不作 人里に移動か

ツキノワグマによる人への被害が相次ぐ今年度、これまでに2県で2人が死亡、4県で22人が負傷した。市街地での目撃例が多く、全国では1万件以上の出没情報があったという。

背景には、「森に人が入らず、クマの生息域が広がった」ことと、ブナの実などの「ドングリ不足」が考えられるという。

石川県では、JRの加賀温泉駅前にある商業施設にクマが入り、猟友会によって射殺された。長野県では自宅近くを歩いていた高齢男性が襲われて首などに怪我。新潟県では70代女性が畑で襲われ、10日後に死亡。秋田県でも高齢女性が襲われて1週間後に死亡。

環境省によれば、4~8月のクマ類の出没情報は1万1112件だが、この5年、1万~1万2千件で推移しているので、「一概に今年が多いとは言えない」という。しかし、これはクマが頻繁に出没する状況が「常態化した」のだというのが専門家の意見。

《東京》農大の山崎晃司教授によれば、過疎化と高齢化により、人が森を使わなくなったため、その分、クマの生息域が広がり、クマが人の近くにすむようになり、遭遇する機会が増えたという。また、石川県立大の大井徹教授は、冬眠に備えて大量に食べるドングリが不作で、「今年は東北や北陸の山にはほとんどブナの実がなく、空腹のクマが人里におりて来やすい。市街地に迷い込むこともある」という。

(uttiiの眼)

この種の記事には珍しく、「対策」に類することも書かれていて、人家に果物の樹や残飯があるとクマが近づきやすいので対策が必要であること。また、早朝や夕方は1人で出歩かない、音を出す鈴やラジオを持ち歩くなど。さらに、万が一遭遇した場合は、走ったり大声を出したりせず、「クマから目を離さずに静かに後ろに下がる」のがよいのだという。

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