一過性の需要に頼らない多面的戦略
しかし、ベッドやリモートワーク用の机は一度購入すれば、何度もリピートするものではありません。
そう、ニトリの好調さは巣ごもり需要の一過性ではないところがポイント。
ベッドは頻繁に買い換えないとしても、食器は買いますよね?ニトリはキッチン用品やカーテンなどの低価格雑貨が店舗売上高の過半数を占めているのです。
ここで考えてみてください。向こう3年で新たにベッドを買いますか?
質問を変えます。向こう3年で、食器を一枚でも買いますか?
もう答えは明らかですよね。
キッチン用品や雑貨は購入機会が多いということ。そのため、需要の把握も容易。膨大な消費者データにより、在庫の回転率を高めることができるのです。また、店舗やECサイトを訪れる機会が増えるので、“ついで買い”も喚起できます。
話をまとめます。ニトリがコロナ以前から強い理由は…
- 製造から販売まで引き受けるので在庫ロスが少ない
- 家具屋さんのふりをして、日用雑貨を売る
- 2により、需要予測がしやすい
この3つと言えるでしょう。
ここまではコロナとは関係なく、ニトリが持っている強みを見てきました。その上で、今回のコロナ特需が後押しをし、驚異の増収増益を達成しているのです。
では、コロナのどのような点が追い風を受けたのでしょうか。見ていきましょう。
コロナでも業績が堅調な納得の理由とは
コロナの恩恵を受けたところに焦点をあてて、業績好調の背景を述べるとすれば、
- 生活用品を扱っている
- 郊外の店舗が堅調
- ディスティネーションストアに選ばれる
まずは、生活用品を扱っている点です。小売業は2極化が進み、アパレル業界は需要が蒸発する一方で、スーパーマーケット、ドラッグストアなど生活用品を扱っている企業は業績が堅調です。
また、郊外の店舗が堅調であったことも挙げられます。都心部の店舗は人が出かけにくくなりましたが、ニトリの郊外の店舗では120%以上と好調な数字となっています。そして、通販事業も20年8月は前期比+156.3%とオンラインの売上も堅調です。
最後の理由は、ディスティネーションストアに選ばれたことが挙げられます。ディスティネーションストアとは、人が何かを買おうと思った時に最初に思い描く店のことを指します。
コロナ禍で、消費行動は変わりました。色々な店を回って、商品を選ぶことができない中で、1番最初にニトリを選び、ニトリで購入を決めるといった行動をした消費者が多かったのです。
危機が起きるずっと前から、常に、ムダ・ムラ・ムリをなくす作業を続けているのがニトリで、その長年の企業努力が、コロナ禍でも、顧客にディスティネーションストアとして選ばれた理由です。
日頃から、『消費者が望む品質や機能を、望まれる価格で、望まれる時に、望まれるだけ揃えておく』この信頼の積み重ねが、コロナでも真っ先に、消費者が向かうお店となったのです。