朝日新聞の怪文書を読解してわかった「日米基軸」という幻覚の正体

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「自由で開かれたインド太平洋」といえば一般的に中国包囲網として理解されていますが、先日、その「インド太平洋」を巡る理解不能とも言える政策提言を取り上げた記事が朝日新聞に掲載されました。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では、著者でジャーナリストの高野孟さんが同提言の全文を精読し、「戦略として話にならない」とバッサリ斬り捨てるとともに、東アジア和平のために日本がなすべきことを論じています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年11月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「インド太平洋」は中国を含めた軍縮の枠組み?――何のこっちゃ?という田中明彦らの提言

10月23日付「朝日新聞」の第2社会面にいささか不思議な30行ほどの記事が載った。「『インド太平洋、軍縮提唱を』/有識者、政府に安保政策提言へ」と題したその記事の全文は次のとおり。

米中対立が深まる中、政策研究大学院大学を中心とする産学連携の有識者グループが、菅内閣への外交・安全保障政策の提言をまとめた。日本が米国と連携して進める「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を深め、中国を加えた軍縮の枠組み作りを率先することなどが柱。政府に来週申し入れる予定だ。

 

外務、防衛など関係各省もオブザーバーとして関わったこの提言は、各大国の米国とソ連が対立した冷戦期のような軍縮の枠組みが、中国や北朝鮮などの軍拡で緊張を増す現在のインド太平洋地域にないと指摘。そのうえで、「緊張緩和の第一歩」として、互いの国を射程に入れる中距離ミサイルについて、「米中ロ(場合によっては英仏印パキスタン)の参加を得て抑制を目指す、軍備管理の枠組み構築を提唱すべきだ」と日本政府に求めた。(編集委員・藤田直央)

一読して、何を言っているのか分からず、頭が混乱する。「自由で開かれたインド太平洋」と言えば、本誌No.1072(「習近平の国賓来日が試金石。菅首相『米中バランス外交』の傾き具合」)で詳しく述べたように、当初はおどろおどろしくも「戦略」と銘打たれ、後に「構想」と薄められ、菅政権に至ってはその構想も外して単なる「地理的概念」と説明するに至るという変遷があるけれども、どう言い換えたところでその本質は中国の東シナ海・南シナ海への軍事進出を牽制するための包囲網の企てであることに変わりはない。ところがこの記事によると、それが「中国を加えた軍縮の枠組み」に発展するのだという。一体どういうことなのか。

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