時すでに遅し。進まぬワクチン接種と変異株の猛威に沈没する日本

 

変異株は従来株より感染力が強いうえ、重症化しやすく、子供にもうつりやすいといわれる。だから、新型コロナの名で一括りにして従来通りの対策を打つだけでは、むろん足りない。政府や自治体の変異株への対応は、あまりに鈍すぎる。

東京都の小池百合子知事は2日の記者会見でこう語った。

「東京においてはこのE484Kという、そういう性質の変異だというふうに聞いております。これが大阪型のN501Yの、この広がりは確認されておらず、E484K株が約半数を占めているというのが現状であります」

東京の変異株は「E484K」、大阪は「N501Y」。変異株についてのゲノム解析が進んでいない東京都の知事が、たやすく断定するのもおかしな気がするが、これまでのところはそういう傾向のようだ。

「E484K」と呼ばれる変異は、コロナウイルスが持つ「スパイクたんぱく質」の484番目のアミノ酸がグルタミン酸(略号E)からリシン(略号K)に置き換わっているという意味らしい。

「N501Y」では、「スパイクたんぱく質」の501番目のアミノ酸がアスパラギン(略号N)からチロシン(略号Y)に置き換わっている。イギリスで見つかったウイルスにはこの変異があるという。

大阪や兵庫では大半が「N501Y」、いわゆる英国型の変異ウイルスに置き換わっているようだ。

南アフリカ株とブラジル株も「N501Y」の変異があるが、それだけでなく「E484K」の変異も起きている。「E484K」は先述したように、東京で多いと小池都知事が言う変異だ。

「E484K」変異のウイルスには、「免疫逃避」と呼ばれる性質があると考えられている。従来株に感染したりワクチンを接種して得た免疫が、E484K変異をもつウイルスには十分に効かないという複数の実験結果が出ているからだ。

「E484K」の変異が、東京独自に起きているのか、ブラジルや南アフリカから持ち込まれたものかはわからないが、ワクチンの効果が十分に見込めないとなると、由々しきことである。

ワクチンに頼れないなら、なおさら変異株に対する検査の徹底が肝要だ。そして、変異株に感染している人を隔離する必要がある。検査と隔離という感染症対策の基本に立ち返るしかないのだ。

日本における変異株の検査は、神戸市のように地方衛生研究所でゲノム解析ができている自治体は別として、各地の保健所や医療機関で陽性と判断されたサンプルを国立感染症研究所に送って行われている。

日数と手間を要し、感染研の処理能力にも限界があるため、当初は陽性サンプルの10%の検査にとどめていた。さすがに今は40%をめざしているというが、本来なら100%にすべきである。

そもそも、一度検査したサンプルをゲノム解析のため感染研まで送って二度目の検査にかけるというのが大いなる無駄であろう。

それをたちどころに解消する方法として、米食品医薬品局(FDA)が推奨しているのが、「マルチプレックスPCR」という試薬を使うPCR検査だ。一つの検体で複数の解析ができるため、1回のPCR検査で陽性かどうかの判定や変異株のゲノム解析が可能だ。

感染研でもこれで検査を行っているはずなのだが、厚労省はどういうわけか、この方法を民間の検査会社や医療機関に広げようとしない。医療データの中央集権とでもいえる体質のなせるわざなのだろうか。

print
いま読まれてます

  • 時すでに遅し。進まぬワクチン接種と変異株の猛威に沈没する日本
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け