韓国「慰安婦が敗訴」の歴史的判決。日韓は時計の針を2015年にまで戻せ

 

《共同論文》全文掲載
慰安婦問題の解決に向けて――私たちはこう考える──ソウル地裁〔1月〕判決と文在寅韓国大統領の年頭所感を受けて (2021年3月24日)

はじめに

私たちは、2019年7月、「声明 韓国は『敵』なのか」を出しました。その中で、安倍晋三政権によって発動された対韓輸出規制を批判し、日韓基本条約や日韓請求権協定では日本の植民地支配の問題は解決していないこと、日本政府は日韓両国民を対立させるようなことを止めるように訴えました。また2020年9月には、安倍政権から菅義偉政権への交代に際して、首脳会談の開催や民事訴訟である元徴用工裁判には政府は介入せず、被告企業の判断に任せるべきことなどを訴えた「声明 いまこそ日韓関係の改善を」を発表しました。

しかし、その後、様々な外交的模索は報じられたものの、両国のデッドロック状態は変わらず、首脳会談さえ行われませんでした。そして、2021年1月8日、元日本軍慰安婦が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が日本政府に賠償を命じる判決を出し、日本政府が抗議するという事態となりました。日本外務省は3月2日ホームページに新しい「見解」を発表し、改めて韓国政府を批判しています。

私たちは、日本が過去の植民地支配の歴史を直視し、誠実に反省、謝罪して、戦後の民主主義、平和主義を守って進むならば、朝鮮半島の人々(韓国および北朝鮮)とともに未来に向かって歩むことができると確信する立場に立っています。日本と韓国は最も近い隣国であり、両国民は友人として協力し合い、平和のうちに共生する関係の構築を追求すべきと考えます。両国の間で対立や葛藤が起きても、冷静かつ合理的な対話によって解決するしかないと考えます。

その立場から、現在の状況について考えていることを、以下に表明します。

1.ソウル中央地裁の判決について

1月8日の判決はいわゆる「主権免除」を認めず、日本政府に賠償を命じました。判決それ自体については、人権は主権免除に優先する、という国際法の最近の考え方を反映した最先端の判決として評価することができます。ダーバン会議(2001年)以来、植民地支配によって引き起こされた苦痛や犠牲に対して、宗主国であった国が謝罪し、あるいは賠償をする動きが世界各地で見られるようになってきました。判決は、こうした潮流に一石を投じたものといえるでしょう。

裁判に訴えたのは、日本の行為によって被害を受け、いまだ救済されていない被害者です。政治が問題を解決できなかったからこそ、被害者は韓国で裁判に訴えるしかなかったのです。私たちは、このことを忘れることは出来ませんが、しかし、この判決によって、直ちに歴史の問題が解決できるとは考えません。ことは歴史認識と外交、そして国民感情にかかわる問題です。粘り強い対話と外交的な知恵、そして国民の説得によってしか解決できないと考えます。

文在寅大統領は、年頭の会見(1月18日)において、日本の記者の質問に答え、「(徴用工判決の現金化は)日韓関係においては望ましいとは思わない」、「(元慰安婦裁判の判決には)正直困惑した」「(2015年の合意は)日韓両政府の正式な合意だったと認める」などと述べ、従来の対応から踏み込んだ発言をしました。そして「原告が同意できる方法を両国政府が協議し、韓国政府が原告を最大限説得する」とも述べました。日韓関係の改善に向けた、大きなチャンスが目の前にあると私たちは考えます。

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