韓国「慰安婦が敗訴」の歴史的判決。日韓は時計の針を2015年にまで戻せ

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先日掲載の「韓国が混乱。日本政府に損害賠償請求した慰安婦の訴え却下の衝撃」でもお伝えしたとおり、ソウル中央地裁が下した歴史的とも言える判断が話題となっています。「この判決を両国が関係修復のきっかけとして活かせるか否かが注目される」とするのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、日韓それぞれで慰安婦問題解決に向け努力を続ける個人や団体の取り組みを紹介しつつ、日本政府に対して具体行動に出ることを提言。さらに当問題解決や理解に有用な、和田春樹東大名誉教授らの共同論文を全文掲載しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年4月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

日韓関係修復のきっかけとなるかソウル地裁の新判決――2015年合意まで立ち戻らないと

ソウル中央地裁は4月21日、韓国の元慰安婦らが日本政府に賠償を求めていた裁判で、原告側の主張を退ける判決を下した。同地裁での別の裁判では今年1月8日に元慰安婦への賠償を日本政府が支払うよう命じる判決が出て、日本外務省が強く反発する見解を発表するなど両国関係が一層険悪化していたが、今回は正反対の結論。両国がこれを関係修復のきっかけとして活かせるかどうかが注目される。

2015年合意は有効

慰安婦問題は、2015年末に当時の安倍晋三首相と朴槿恵大統領との間で「最終的かつ不可逆的に解決」することで合意、それに基づいて韓国側が「和解・癒やし財団」を設立し、そこへ日本政府が送付した10億円を元に元慰安婦とその遺族に賠償を支払う事業を開始した。しかし17年に大統領になった文在寅は、選挙中から「合意は誤りだった」と主張し、18年9月にはその事業を停止、財団を解散してしまった。

そのため日本政府が態度を硬化させ、両国の首脳が言葉を交わすこともないような関係に陥った。それをますます悪化させるような1月の地裁判決には文大統領もさすがに危機感を抱いたようで、10日後の1月18日の新年会見で、「判決に正直、困惑している」「15年合意は両国間の公式合意だ」と述べ、関係改善策を探る姿勢を見せた。

新判決は、そのような文の意を汲んだような内容で、

  1. 日韓合意は日本の謝罪と反省を含む内容のものであること
  2. 日本政府が拠出した10億円に基づいて、韓国政府認定の元慰安婦240人のち41.3%にあたる99人に支援金が届けられ、救済されたこと
  3. 合意は今も有効であり、残された問題の解決は〔裁判ではなく〕日本との外交交渉を含め韓国の対内対外努力により達成されなければならないこと

――などを指摘した。

文在寅は、この判決に助けられつつ関係改善に取り組みたいのだろうが、具体的にどこから手を着けるかとなるとなかなか難しく、また何をやっても過激な支援運動団体からはボロクソに言われるに決まっている。

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