韓国「慰安婦が敗訴」の歴史的判決。日韓は時計の針を2015年にまで戻せ

 

5.被害者の「心に届く誠実な謝罪」について

私たちは、これまで日本の政府と国民が辿ってきた、「河野談話」から「日韓慰安婦合意」に至るおよそ25年の流れを振り返ってきました。私たちは、一時的に遮られたこの流れを改めて回復し、韓国側と対話する中にしか解決の道筋はないと考えます。2015年の合意は、たしかに不満が残り、不十分なものでした。しかし、そこにはこれまでの歴史認識と謝罪の流れを一歩進める側面があったことも見逃すことはできません。このよい側面を生かし、さらに補充し、高めていくほかに問題解決の道はないのではないでしょうか。植民地支配の歴史と被害者の怒り、苦しみと傷を見つめ、それに対処することは、司法判決の執行によっては成しとげることはできず、両国民の合意と和解に基づく共同作業をもってしなければならないのです。

何が決定的にもとめられていたのか。それは被害者の「心に届く誠実なる謝罪」だと私たちは考えます。

加害の歴史を清算するとは、(1)加害者が加害の事実と責任を認めて誠実に謝罪し、(2)その証として何らかの金銭的補償を行い、(3)過ちを繰り返さないために問題を後世に伝えるということです。この三つの関係が大切です。(1)(2)とともに、(3)を誠実に継続実行することによって(1)(2)の謝罪が真摯なものであることが被害者・遺族に理解されるようになるのです。

2015年12月28日、合意成立後、安倍総理は、記者団に、「最終的、不可逆的な解決を(戦後)70年の節目にすることが出来た。子や孫、その先の世代に謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない」と強調しました。しかしこの発言こそが問題の本質を理解していないことを示しています。まず、被害者たる元慰安婦の方々に対し、外務大臣に代弁させるだけではなく、首相自らの言葉によって語り、自ら署名した「手紙」を彼女らに届けるべきではなかったでしょうか。

「もう謝らなくてもいい」と言うことができるのは、被害者の側ではないでしょうか。加害者の側が歴史問題について「不可逆的解決」はあっても「最終的解決」、すなわち「なかったことにする」ことはできません。

戦時の日系人の強制収容問題では、レーガン米大統領が、1988年8月、公式謝罪、生存者一人2万ドルの個人補償、強制収容にかかわる学校教育のための基金設立などを盛り込んだ「市民自由法」に署名しました。そして、ジョージ・ブッシュ大統領(父)は、1990年10月の式典において、9人の日系人に大統領の「謝罪の手紙」と「2万ドルの小切手」を直接手渡し、それを皮切りに、歴史の清算が進められました。

「大統領の手紙」には、「金額や言葉だけで失われた年月を取り戻し、痛みを伴う記憶をいやすことはできません。…私たちは過去の過ちを完全に正すことはできません。しかし、…第2次大戦中に重大な不正義が日系米国人に対して行われたことを認めることはできます」と記されています。バイデン新大統領も、大統領就任後、2月19日(1942年に強制収容の大統領命令が出された日)、「連邦政府の公式謝罪を再確認する、米国史で最も恥ずべき時の一つ…」と強制収容の歴史を振り返ったと伝えられています。

戦時の中国人強制連行・強制労働問題については、2000年の鹿島・花岡の「和解」以降、西松の広島・信濃川の「和解」を経て、最近では、三菱マテリアルの「和解」があります。2016年6月、三菱マテリアル社の木村光執行役員は、北京に出向き、中国人受難者閻玉成さん(86歳)らとの間で、「和解」が成立しました。その「和解合意書」第1条(謝罪)には次のようにあります。

「日本国政府の閣議決定『華人労務者内地移入に関する件』に基づき、約3万9,000人の中国人労働者が日本に強制連行された。弊社の前身である三菱鉱業……は、その一部である3,765名の中国人労働者を……受け入れ、劣悪な条件下で労働を強いた。この間、722人という多くの中国人労働者が亡くなられた。本件については、今日に至るまで終局的な解決がなされていない。『過ちて改めざる、これを過ちという』、弊社は、このように中国人労働者の皆さまの人権が侵害された歴史的事実を率直かつ誠実に認め、痛切なる反省の意を表する。…弊社は、当時の使用者として歴史的責任を認め、中国人労働者およびその遺族の皆様に対し深甚なる謝罪の意を表する。…上記の歴史的事実及び歴史的責任を認め、かつ今後の日中両国の友好的発展への貢献の観点から、本件の終局的・包括的解決のため設立される中国人労働者及び遺族のための基金に金員を拠出する」と。

そして、同社は、謝罪の証として、一人当たり10万人民元(約170万円)の和解金を用意し、過去の過ちを繰り返さないための記念碑建立の費用、中国からの受難者・遺族を日本に招請しての追悼事業の費用などを、別途用意しています。生存受難者らは、同社の「謝罪を誠意あるものとして受け入れ」(和解書第1条)、「私たちは、中国人労働者の強制連行を主導した日本政府、並びにその他の多くの加害企業が依然として歴史事実を無視し、謝罪を拒む状況下で、三菱マテリアル社が歴史事実を認め、公開謝罪する姿勢を積極的に評価する」と述べました。

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