「O型はリスク低い」は本当か?コロナ重症化に潜む数字のマジック

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「血液型により新型コロナの重症化リスクが異なる」という分析結果が大きく報じられ、話題となっています。しかし、このようなデータに接した際には注意が必要とするのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』でその理由を解説するとともに、誤解を招きかねないメディアの報じ方について苦言を呈しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

コロナ重症化「O型だから大丈夫?」という数字のマジック

O型は重症化リスクが低い――。

慶応大学の金井隆典教授らの呼びかけで、昨年5月に立ち上がった「コロナ制圧タスクフォース」の分析結果に、注目が集まっています。

研究班は、全国100以上の医療機関から、患者3,400人以上の血液などを集めて血液型別の分析と、遺伝情報を解析。その結果、重症化リスクはO型が最も低く、A型とB型はその約1.2倍、AB型は約1.6倍だったことがわかりました。

また、重症化と関連が強いと思われる日本人を含むアジア人特有の遺伝子配列も見つかり、この配列がある人はない人に対して重症化する割合が約2倍になったといいます。今後は、この遺伝子配列によってどういう影響があるのかを調べ、重症化のしやすさを判断する指標などを明らかにしていくそうです。

このような結果は一般の人にもわかりやすいので、話題にもなりやすい。メディアもこぞって報じていますが、「数字の意味」や、海外での分析結果も同時に伝えないことには、誤解が生じかねません。

実際、血液型については感染のしやすさ、重症化共に「関係ない」との結果が、4月上旬に米インターマウンテン・メディカルセンター心臓研究所のJeffrey Anderson氏らにより発表されたばかりです。

パンデミック初期には、新型コロナウイルスの感染リスクや感染した際の重症化リスクはA型の人で高く、O型の人で低いとする研究結果が報告されていました。

しかし、米国の約10万8,000人の患者データを分析したところ、血液型と感染リスク、重症化リスク共に、血液型との関連が認められないことが明らかになったといいます。ちなみに、対象とした患者は、新型コロナウイルスの検査を受けた10万7,796人で、このうち1万1,468人が陽性と判定されていました。

つまり、統計的に相関関係があっても、因果関係があるとは限りません。また、相関関係があっても、分析に用いる人数や、その他の要因をいかに制御するかによっても、結果は全くかわります。

私自身、研究者の端くれなので、量的研究を何度もやっていますが、「数字」は魔物です。分析を繰り返しやっていると、偶発的に関連が出てしまったり、「自分が欲しいデータ」のための手法をとってしまったり「数字のために数字を読む」といったことが起きてしまうのです。

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