引率する教員の不安
都内の公立校で働く教員は、視察会に参加したという。
「遠足のようにバス移動ではなく、公共の交通機関を利用というので、バスと電車で移動する予定で、会場にも行きました」
「本当に行くの?感染リスクは?教師が引率するって頭に入っているのかな…いや、もう、これは何かあったらって思いました」
「感染したら命の危機、家族にも迷惑をかけるし、生徒が感染しても地獄です。それに、必ず報じられたりして、結局僕らが責任をとれってなりやすい。もう、どっちも地獄です。それこそ、ボイコットしようかと半分冗談で同僚と話したくらいです」
(引率予定であった教職員)
東京オリンピック・パラリンピックでは、交通渋滞などが予測されるため、学校行事と言えども、貸し切りバスで移動するなどはできず、公共の交通機関として電車やバスを利用するのだ。さらに、時期は夏真っ盛りとも言える。熱中症対策の他、新型コロナ感染症対策もしなければならず、ただでさえ引率すること自体が大変なのに、二重三重の対策が必要になるわけだ。
ある意味、何万人という数の生徒が一斉に動くわけで、密になることは火を見るより明らか。色々想定をしなければならない教員の立場からすれば、やれる事は全てやるにしても、もはや感染リスク付のあみだくじでも引かされる思いなのだろう。
保護者の不安
保護者の不安も大きい。
スポーツで優秀な成績を出している生徒の保護者でも、「見せてはやりたいが、コロナ禍であるわけだし、色々な報道をみていて、感染者数が爆増しそうなイメージしかないから、今回はテレビでいいよな??って子どもの話しましたよ」という話が聞けた。
この保護者の周りでも、「子どもが無症状で感染し、家に帰ってきて一緒に食事をするなど一緒の時間を過ごすわけじゃないですか。そうなれば、大人の私どもは濃厚接触者になって、仮に新型コロナに感染したら…って思うと、何考えてんだ!と思っちゃいますよ…」など、感染リスクを心配する声がとても多くあるということがわかった。
家庭内感染の方が多いなどと言われても、それだけ聞くと家庭の問題とも言いたそうに感じるが、その実、原因をこの行事が作り出しているのだから、モヤモヤするのであろう。
私が聞いた限りでは、ほぼ全員が、「学校連携観戦」には反対であった。
「緊急事態宣言もまん延防止も、その差すらわかんないけど、結局外に出るなってことでしょ。その通り、うちはもうそんなの参加しないし、欠席扱いするならどうぞ!ですよ。そんなのコロナは風邪ですって言っているみたいなもんでしょ、学校が。そんなんで、多様性とかSDGsとか言っているけど、できないでしょ。そんな多様性を認めないなら」
確かに、学校の校長の中には一部変わり者が居て、新型コロナ感染対策を手洗いとマスクのみにして、アルコール消毒などは手間だからとやらない人もいる。
こういう校長に限って、やたらと根性論を持ち出すが、精神力を高めても感染リスクは減ることはないのだ。
地方自治体・各校校長に投げる責任
5者協議も然り、政府も組織委員会も然り、結局、「学校連携観戦」の実態が白日の下にさらされさると、各自治体に任せる、いや、学校長に任せますと参加不参加についての責任を投げてしまうのだ。
実際、学校行事にしてしまっているから、その場合の不参加はいかなる理由があっても欠席扱いになるが、これも「校長の裁量で」とお茶を濁すわけだ。
リスクを考える力がわずかでもあれば、不参加は当然のことであろう。任せられれば、多くの学校や自治体は不参加にしてチケットキャンセルをするわけだ。
雑なたとえにするならば、コロナ禍のこの時期に、大人に飲み会チケットを割安で買わせ、行かなければ普通は欠勤扱いだけれども、それは各部門の部長がどうするか決めてと言われるようなものだ。
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