中等症も自宅療養という“棄民政策”を平気で使う菅首相に国民が殺される日

 

もちろん、誰しもそれで納得できるわけはない。複数の記者から再度、責任について問われると、「この波をできるだけ早く収めることが一番の私の責任だ」とごまかした。

どうして「対策が不十分だった」と認め、そのうえで、今後の具体的方針を示さないのだろうか。波を早く収めるためには、これまでのやり方がなぜ効果をもたらさなかったのかについての反省と改善が必要だろう。

以下のように激しく噛みついた記者がいる。

「甘い見通しの上で、デルタ株を見くびっていたことが、今回の感染爆発の背景にあるのではないか。根拠なき楽観主義が感染をまた引き起こしているのではないか」

菅首相の答えはこうだ。

「インドであのような状況になったときに、水際対策はきちんとやっている。オリンピックは、海外の選手と入ってくる方たちと完全にレーンを分けている。そうしたことでしっかりと対応させていただいている」

インド由来のデルタ株が日本国内に流入しないよう、空港などでの水際対策をきちんとやったというのだが、それならなぜ今の感染爆発が起きたかについての説明がつかない。水際対策の着手が遅れ、気づいた時には国内でデルタ株感染が静かに広がっていたというのが実態ではないか。

菅首相の言う「デルタ株の急速な広がり」は、想定外ではなく、専門家の間ではいわば常識的な予測に過ぎなかった。それを無視して、東京五輪の開幕を前に体裁を整えようと、緊急事態を解除し、むりやり安全安心ムードをつくろうとしたのではなかったか。そのあげく、デルタ株がジワジワ蔓延し、取り返しのつかないほどになったのだ。

最近の菅首相は「ワクチン接種が進み、人流は減少、ゆえに東京五輪は大丈夫」という論法を駆使している。しかしどのデータをもって、人流が減少したといえるのか明確ではない。むしろ昨今の報道によると、東京の中心部は混雑が目立っているようである。

この現状に、政府コロナ対策分科会の尾身会長は「最大の危機は社会で危機感が共有されてないことだ。このまま共有されなければ、感染はさらに拡大し、早晩、医療のひっ迫がさらに深刻になる」と強調する。

ワクチン接種も、高齢者こそ75%以上進んだものの、2回接種を終えた人は全体ではまだ30%ていどだ。集団免疫にはほど遠く、高齢者の重症患者が減った半面、40~50代を中心に中等症患者が急増している。

中等症といっても、侮ってはならない。海外では重症としてカウントする国もあるのだ。

中等症は二つに分類される。息切れや肺炎が見られるのが中等症1の段階。中等症2になると、肺炎が広がり、呼吸不全となって、酸素マスクが必要になる。

これほどの病状にある患者でも、重症化しないと担当医が判断すれば、入院はできない旨の御沙汰を出すというのである。できるだけ病院のベッド数を確保したい意図はわかるが、まさか医療の専門家がそんな助言をするとは思えない。中等症1でも、息切れや肺炎が見られるレベルであり、いつ容体が急変するかもわからない。

そういう患者を自宅に待機させて、人工呼吸器が必要なほどに重症化する可能性があるかどうかを、誰がどうやって判断するというのだろうか。医療上の棄民政策ではないのか。

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