中等症も自宅療養という“棄民政策”を平気で使う菅首相に国民が殺される日

 

この政策転換と関わりがあると思われるのは、英国の状況だ。

ワクチン接種が進んだ英国では、今春にはいったん新規感染者数が激減し、コロナ対策の行動規制が緩和されはじめた。ところがその後、デルタ株が流行して感染者数が急増、7月17日には5万4,000人を超えるほどになった。

しかしそれでも、死者数は4月以降、1桁~2桁台と低い水準を保っていて、ワクチン接種の効果とみられるため、英政府は「インフルエンザのようにコロナを受け入れて対処すべき」として、ロンドンを含むイングランド全域で新型コロナウイルス対策の行動規制をほぼすべて撤廃した。

この政策の意味するところは、新型コロナで死ぬ人が少なくなったのなら、国民に不自由を強いることをせず、ウイルスとの共生をめざそうではないか、ということだろう。

菅首相が遅ればせながらワクチン接種に目をつけ、それ一本やりでコロナ対策を進める一方、ロックダウンの法整備に慎重なのは、英国の経験を参考にしているからに違いない。ただし、民間病院の多い日本は、公的医療機関が充実している英国のようにコロナ患者を受け入れるゆとりが少ない。その点を埋める方策として、ひねりだしたのが、今回の入院制限なのではないだろうか。

こんな推測を巡らすのも、菅首相からきちんとした説明がないからだ。いきなり、「方針を変えました」で済ませるのでは、不安、不信が募るだけである。

そういえば、7月30日の会見で、一人の記者が「総理のメッセージはワクチンが効果を上げていると言うばかりで乏しく、それが国民の危機感のなさに繋がっているのでは」と詰め寄ったときの、菅首相の答えはこうだった。

「ワクチン接種こそが、まさに決め手であり、総力を挙げて接種を進めていく必要がある」

ワクチン接種を進めるべきかどうかは、この記者の論点ではない。菅首相のメッセージの出し方を問題にしているのだが、その問いかけには、いっさい答えない。要するに問答無用。それが、菅流「官邸主導」の実体だ。

記者会見は、国民との対話の場でもある。目の前にいる記者だけを、限られた時間設定のなかで、いかに都合よくコントロールしようとしても、テレビで視聴している人々の耳目はごまかせない。国民に真摯に訴えるためには、切々と言葉を尽くすしかないのだ。

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image by: 首相官邸

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