河野太郎の決意。「安倍・麻生」が忌み嫌う石破と狙う“党風一新”の乱

 

立候補を表明しているのは、岸田文雄、高市早苗、河野太郎の三氏だが、いずれも図抜けた存在ではない。

高市早苗氏は、MMT(現代貨幣理論)ばりの経済政策をひっさげて登場した。インフレ率2%に達するまでは、プライマリーバランスを封印して財政出動に励むという。持ち前の度胸と右派思想で安倍氏の支持もとりつけたが、いかんせん、党の看板となるほどのカリスマ性も実績もない。20人の推薦人はほぼ安倍氏の力で集めたといわれる。

「二階切り」の党役員人事構想をぶち上げ、颯爽と総裁選に名乗りを上げた岸田文雄氏も、しだいに好人物、平凡、優柔不断といった地金が出てきて、当初の強い印象は薄れている。

その分、改革者のイメージが先行する河野氏に期待が集まるのだろうか。メディア各社の世論調査によると、「次の首相にふさわしい人」は、どこも河野氏が断然、トップである。

たしかにツイッターなどを駆使した河野氏の発信力には定評があり、フォロワーは241万人を数える。

防衛大臣だったころ、安倍前首相がトランプ前大統領に売りつけられた無用の長物「イージス・アショア」の配備計画を撤回するなどした。その合理的な実行力も、評価されてしかるべきだろう。

だが、これは当時の菅官房長官の了解があったからこそ、できた面がある。首相の立場になった時、河野氏が合理性を貫けるかどうかとなると、いささか疑問だ。

というのは、意外に“日和見”ではないか、と思えることが河野氏には多々あるからだ。最近でいえば、総裁選に出馬すると表明したさいの会見がそうだった。

福島第一原発の事故後、河野氏は超党派で「原発ゼロの会」を設立したほどの脱原発派だ。その考えは変わらないかと、会見では当然聞かれる。河野氏は平然と答えた。

「いずれ原子力はゼロになるんだろうと思う。…2050年までにカーボンニュートラルを実現するには石炭、石油から止めていかないといけない。きちんと省エネをする。再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく。それでも足らないところは、安全が確認された原発を当面は再稼働していく。それが現実的なんだろうと思っています」

要するに、原発再稼働を容認するというのだ。変節したのか、とメディアは騒ぐ。しかし、もともと、河野氏はそんなところのある人物なのだ。異端ぶって世間の人気をとり、主流派に仲間入りするチャンスが到来すると、角を隠しておとなしくなる。

筆者は2007年以来、政治関係の記事を書いているが、河野氏を取り上げたのは、大体、期待を裏切られた時だ。

民主党政権が誕生した2009年9月より少し前、河野氏はめきめきと頭角を現していた。衆議院外務委員長に就任するや、委員会審議の活性化に乗り出し、話題になった。政府側に時間的猶予を与えるかわり、曖昧さのない、きちんとした答弁を求める委員長の姿が凛々しかった。自民党の無駄撲滅プロジェクトチームの座長としても活躍した。

だが、2015年10月、河野氏は原発問題などでにぎやかに文句をつけてきた過去のブログ記事を、一切見られないようにしてしまった。何が起きたかというと、衆院7期にして、めでたく初入閣したからだ。

「国家公安委員会委員長並びに行政改革・公務員制度改革並びに内閣府特命担当で規制改革・防災・消費者問題・食品安全、その他死因究明・公文書管理いろいろございますが、全部で11の指示を承ったところでございます」

大臣のポストを与えられ、河野氏は当時の首相だった安倍氏に頭が上がらなくなった。

河野氏は日本語をちゃんと使えるし、英語も達者だ。本人が言うように突破力もある。だが、これまでの変節は自民党のなかで生き残るための知恵だとしても、もし念願かない首相になって、有言不実行を続けるようなら、致命的だ。

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