ホンマでっか池田教授が暴露。「種の保存法」は「絶滅促進法」だった

shutterstock_1705147936
 

国の天然記念物で小笠原諸島だけに生息していた蝶「オガサワラシジミ」は、昨年、島外飼育されていた個体がすべて死亡し絶滅してしまったと考えられているようです。となればすぐにでも「種の保存法」の指定を解除し、標本を譲渡できるようにすべきと訴えるのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』で池田教授は、「種の保存法」により市井の飼育名人の活動が制限され、昆虫に限っては「絶滅促進法」となっている一面を暴露。指定されている種の成体も標本もやりとりできないことで起こる問題を明らかにしています。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

絶滅した日本固有種の蝶、オガサワラシジミ

2019年に出版した『もうすぐいなくなります─絶滅の生物学』(新潮社)の文庫化が決まって、最新のデータを盛り込むべく読み直している。最近明らかになったのは、小笠原諸島固有種の蝶、オガサワラシジミが絶滅したらしいことだ。絶滅した最初の日本産の蝶である。小笠原諸島は絶滅種と絶滅危惧種の“宝庫”であるが、なぜか、2019年時点で、昆虫に関しては、環境省のレッドリストを見る限り、絶滅した種はいないという事になっていた。

小笠原で最も絶滅種と絶滅危惧種が多い動物のグループは貝類で、環境省のレッドリストに掲載されている19種の国内の絶滅種の内、実に18種は小笠原の固有種である。小笠原には100種近い陸産貝類が生息している(いた)がそのほとんどが絶滅または絶滅に瀕している。個々の種の個体数が少なく、生息環境も極めて限定されているので、少しの環境変動で絶滅した種が多かったのだろう。

もう一つ大きな原因は、沖縄から恐らく非意図的に父島に入ってきたニューギニアヤリガタウズムシが、固有種の陸産貝類を捕食したことにある。小笠原にはアフリカマイマイという外来種の大型の陸貝がいて、かつては食用として重宝されたらしいが、食料事情が良くなって食べる人がいなくなり、一転、作物を食い荒らす邪魔者となった。ニューギニアヤリガタウズムシは、当初こそ、アフリカマイマイを食べる良い奴として歓迎されたが、アフリカマイマイのみならず、固有種の貝類も食い荒らしたのである。不幸中の幸いと言うべきか、今のところ父島以外には分布していないようだ。

ところで、環境省のレッドリストに載っている日本産の昆虫類の絶滅種は4種。カドタメクラチビゴミムシ、コゾノメクラチビゴミムシ、スジゲンゴロウ、キイロネクイハムシである。前二者は洞窟性の昆虫であるが、石灰岩の採掘によって棲息地の洞窟もろとも消滅してしまった。後二者の絶滅原因は定かでないが、生息環境の悪化が主たる原因であろう。

小笠原で、間違いなく絶滅したと思われる昆虫は少なくとも3種ある。そのうち2種はカミキリムシで、1915年採集のただ1頭の標本に基づいて、槇原寛氏によって記載されたオガサワラゴマダラカミキリと、高桑正敏博士が1976年に採集して、草間慶一博士によって記載されたミイロトラカミキリで、これも1頭しか採れていない。環境省のレッドリストにはミイロトラは絶滅危惧IA類として記載されているが、オガサワラゴマダラカミキリはなぜか記載されていない。東京都のレッドリストには両種とも絶滅にカテゴライズされている。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • ホンマでっか池田教授が暴露。「種の保存法」は「絶滅促進法」だった
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け