ホンマでっか池田教授が暴露。「種の保存法」は「絶滅促進法」だった

 

3種目のオガサワラシジミは、私が小笠原の昆虫相の調査をしていた1970年代の後半には父島、母島両島には豊産し、小笠原で最も普通の蝶であった。それが、1980年代に入って、ペットとして導入されたグリーンアノールが分布を拡げ始めた頃から、徐々に数を減らしていった。1992年に小笠原を訪れた頃は、父島ではほとんど絶滅状態で、母島の猪熊谷や石門周辺に僅かな個体が飛んでいただけであった。グリーンアノールは昼行性の小昆虫を片っ端から捕食していって、犠牲になったのはオガサワラシジミばかりではなかった。

このままでは絶滅は避けられなくなった2005年に、多摩動物公園とさらに2019年からは新宿御苑で累代飼育を開始したが、2020年の8月に飼育個体が全滅した。小笠原においても、何度かの調査の結果、棲息は確認できず、オガサワラシジミは地球上から姿を消した。

環境省は、2008年に本種を種の保存法に基づく、国内希少野生動植物種に指定して、標本の譲渡や生体の飼育を禁じるという、愚かな措置をおこなっているので、速やかに指定を解除しないと、標本所持者が亡くなると、売ることも無償譲渡もできない標本(博物館に寄付することはできるけれど、手続きが面倒で、寄付者にとっては何のメリットもない)は残された家族にとってはゴミなので、廃棄される運命にある。何度も指摘してきたように、種の保存法は昆虫類に限って言えば、貴重標本廃棄法なのである。

さらに、一般人が飼育できないので、公共機関のみでの累代飼育という事になるが、公共機関には必ずしも飼育の名人がいるとは限らず、多くの場合、今回のように失敗に終わる。昆虫愛好家の中には神様のように飼育の上手い人がいて、そういう人にも飼育の機会を与えておけば、絶滅は免れていた可能性が高い。

環境省は累代飼育の結果、近交弱勢が現れて絶滅したと言っているが、通常、近交弱勢は、5~6世代も経てば現れるので、20世代後に絶滅したのは、何かほかに原因があったのかもしれない。穿って考えると、民間にも飼育を許可した結果、環境省の管轄下での累代飼育は失敗したが、民間の中には首尾よく行っているところがあるとすると、メンツが丸つぶれになるので、累代飼育はすべて環境省の管轄下で行いたいと思っているのかもしれない。

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