“登場人物たちに寄り添い、隣の部屋から囁いているような距離感で…”というのが三谷のリクエストだというのです。
言葉はシンプルですが、このメッセージの持つ意味不明感は半端ない気がします。現場のスタッフが、これを長澤にどう伝えたのか、是非聞いてみたいものです。
ドラマのナレーションの基本は“自らの感情を殺して、いかに情報を正確に視聴者に伝えるか…”というポイントにあるように思います。
三谷は“演者に寄り添い…”と助言したと言いますが、ナレーションは絶対に演者より前に出ることは許されない…と思うのは私だけでしょうか。
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『青天を衝け』のNHK・守本奈実アナウンサーや、『真田丸』のNHK・有働由美子アナウンサー(当時)は、視聴者の心を穏やかにさせたものでした。
もし『鎌倉殿~』のナレーションが失敗で終わるとしたら、長澤云々ではなく、三谷のムチャ振りが視聴者には受け入れられなかったということでしょう。
またそれを許したNHKの演出のミスとも言えます。
ハリウッドのドラマ製作の現場では、今回のようにナレーションが問題になることは極めてレアなケースと言えます。
彼等は日本のドラマのように、ナレーションで視聴者を誘導する…説明することを生理的に嫌います。
『奥さまは魔女』、『アイ・ラブ・ルーシー』のようなアメリカのシットコム・ドラマが大好きで多大なる影響を受けた三谷が“囁くように…”とリクエストしたのは、視聴者の邪魔にならないように…という意味も含まれていたのかもしれません。
それが結果的に“聞き取れない”という意見を招いたのかも…。
長澤も三谷をも擁護するつもりは毛頭ありませんが、もしこれが視聴率に影響を及ぼしているのなら、小栗旬らの秀逸な芝居が埋もれてしまうのが、残念に思えて仕方ありません。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」
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