なぜコストコで買いたくなるのか?消費者の人間心理を巧みに操る“マジック”の秘密とは

2022.02.22
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今や大量買いの代名詞ともなった大型スーパー「コストコ」。日本にはまだ30店舗ほどしかないため、行ったことがないという人は多いかもしれません。しかし、一度足を踏み入れてしまえばまさにそこは買い物のワンダーランド。誰もがコストコの魅力にハマってしまうことでしょう。なぜコストコは多くの人をひきつけるのでしょうか。マーケティング&ブランディングコンサルタントとして活躍する橋本之克さんが“コストコマジック”について解説していきます。

買い物のワンダーランド「コストコ」

コストコの発祥は1976年、カリフォルニア州サンディエゴにある飛行機の格納庫を店舗に改造した倉庫店だそうです。日本上陸は1999年。2022年1月時点で30店舗です。巨大な倉庫のような店の構造、販売される商品の数やボリューム、価格の安さなどが特徴です。

SNS等で来店客の声を見ていくと、行くこと自体がイベントで楽しいという声も多く見られます。国内随一の個性をもつ、特別な商業施設と言えるでしょう。

こうした店の特徴付けだけでなく、顧客の購買意欲を高める点でも、コストコはさまざまな工夫をしていると考えられます。行動経済学の視点で店舗内を見ていくと、そこには人が行ってしまう不合理な選択や行動を、巧みに購買に向けて誘う仕組みが透けて見えます。それは、あたかも心を操るマジックのようです。

「コストコ」が繰り出す3つのマジック

特に目立つ、3つのマジックについて述べていきます。

会員制に秘められら心理的効果とは?

コストコ・マジックの一つ目は「会員制」です。店を利用する際に会員登録し、年会費を支払います。一般客は4,840円からです(2022年2月現在)。初めて売り場に足を踏み入れた時は、約5000円の“損をした状態”です。これが心理的な影響を及ぼします。

まずは「サンクコスト効果」です。サンクコストは、過去に失って取り戻せないコスト(時間、金、労力等)のことです。一度失ったコストは二度と戻らないので本来、その後は新たな気持ちで意思決定をすべきですが、人はサンクコストにこだわってしまいます。例えば、“商品が欲しいから買う”のでなく、“払った年会費のモトを取るために買う”といった行動をとってしまうのです。

とはいえ、何も買わずに帰るのは、“大量に安く買える”機会を失うことになります。そこで「損失回避」の心理が働きます。人は損失に強く反応し避けようとします。同じ金額の損と得があった時、損した時の不満や悲しみは得した時の満足や喜びの2倍以上であることが実験で確かめられています。この心理により人はコストコで“買わなければ損”と考えます。

さらに、欲しい商品を買う場合も意識が普段と違います。例えば、微妙にサイズが小さい洋服を普段なら買わずにあきらめる人でも、“着られるのだから買ってしまえ”と考えてしまう可能性が高まります。

これは「反転効果」の影響です。得している状況と損をしている状況では、同じ選択でも判断が逆転するのです。得していれば安全確実な得を目指し、損の状況では一か八かリスクある選択をします。ギャンブルの最終レースが良い例です。

一日の勝敗の通算で利益があがった状況では慎重に判断しますが、負けが続いた最終レースではリスクがあっても「反転効果」の影響により、挽回を目指して大穴を狙ってしまいます。

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