なぜコストコで買いたくなるのか?消費者の人間心理を巧みに操る“マジック”の秘密とは

2022.02.22
 

倉庫型店舗がもたらす消費行動

コストコ・マジックのニつ目は「倉庫型店舗」です。

飛行機でも格納できそうなほど広く、天井も高いスペースは、普段踏み入ることの無い巨大空間です。さまざまな商品が運送後のパレットに乗った状態で、天井近くまで陳列されています。

キャンプセットや家電などをはじめとして、通常の日本の店舗では見かけない巨大サイズの商品も数多く売られています。そこには非日常的な雰囲気があり、日本にいながら外国で買い物をしているかのような気分が味わえます。

そのような状況では「メンタルアカウンティング」が働きます。これは、心の中でお金を出所や使途で無意識に分け、使い方も変える傾向です。

例えば海外旅行に行った時は節約など考えずに、目についたものを買ってしまいがちです。これは普段の買い物をする(心の中の)財布とは別の(心の中の)旅行用財布からお金を払っているような状態です。近所のスーパーでは10円の違いでも気になる人でも、あまり考えずに高い買い物をしてしまうのです。

決してすべての商品が安いわけではない

コストコのマジック、三番目の特徴は「品揃えと値段設定」です。

店が広いこともあり、宝飾品、薬品、家電、生活雑貨、衣料品、食料品と幅広いジャンルの商品が売られています。しかしながら、メーカーやブランドは絞られ、色やサイズのバリエーションもさほど多くはありません。これには「決定麻痺」による買い控えを無くす効果があります。

これは人間が多すぎる選択肢に接した時、選択を先延ばしにしたり、 選択すること自体をやめてしまう心理です。コストコはこの状態が起きにくく、購入の意思決定をしやすい品揃えにしているのです。

必ずしも全ての商品が安いわけではありませんが、Godivaのチョコなど、誰もが知る高級品が割安で販売されています。これにより「ハロー効果」が働きます。

これは対象が持つ顕著な特徴に引きずられて、他の特徴の評価が歪められる現象です。目立つ商品が割引されていることにより、全ての商品が安いと思ってしまうのです。

さらに売られている商品の量が通常の店と異なります。例えば大型の懐中電灯が3個セットで売られていたり、高級ウィスキーが1.75リットル瓶で売られるなどです。こうなると、普段の買い物と比べて、得なのかどうか計算が難しくなります。普段の価格感覚が通用しないのです。

そうなると過去の経験から“大量なら安い”と判断しがちです。この時、思い出しやすい印象をもとに判断する「利用可能性ヒューリスティック」の影響を受けています。

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