安売りなしで社内が団結。倒産危機のサトウ食品が復活できた訳

 

コメ離れでも絶好調~世界初を連発する開発力

この無菌製法技術から、サトウ食品はもう一本の柱となる商品も手に入れる。それが「玄関開けたら2分でご飯」というCMで有名になった「サトウのごはん」。レンジで2分、チンするだけでほかほかのご飯ができあがる。

発売から33年、今やこのパックご飯は非常食として買い置きするだけでなく、普段から日常的に利用する人が増えている。

餅同様、丸ごと無菌化された新潟・聖籠町のサトウ食品聖籠工場。米を小分けし、水を入れたのはパックご飯と同じ形の厚釜。これを直火で釜炊きする。米が入った先には60メートルもの連続炊飯器が。この中を40分かけてゆっくり移動していく。

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最初は弱火で「はじめチョロチョロ」真ん中あたりでは強火に変わり「中パッパ」、吹きこぼれそうになるタイミングで火を止め「赤子泣いても蓋取るな」と、蒸らしていく。こうして昔ながらの釜炊きを再現しているのだ。

「他社は米の蒸気を吹き付ける蒸気炊飯。釜炊きはサトウだけです」(工場長・五十嵐信之)

1食分ずつ炊き上がったご飯は容器に移される。同じ形の容器をかぶせ、最後にフィルムの蓋をして完成。つまり、炊きたてご飯をパックしただけだから「70~80度ぐらいの熱々です」(五十嵐)。

保存料などは一切使っていないが、賞味期限は1年も。150度の高圧蒸気を米に吹き付け、瞬間殺菌。さらにパックご飯の容器にも独自の仕掛けが。容器は2重構造になっていて、間には脱酸素剤が入っている。これがパックの内部の酸素を吸収するので、カビ菌も繁殖できず、1年という賞味期限を実現させたのだ。

こうして作られるサトウのご飯の売り上げは今や餅を上回り253億円に。これまた国内トップシェアとなっている。

そのサトウが新潟市中央区の老舗海鮮メーカー「加島屋」とタッグを組み、ヒット商品を生み出した。「加島屋」の名物は1カ月間熟成させた鮭を焼き、その身をほぐして作る「さけ茶漬」(1,944円)。しっとりとしていて旨味が強い、普通の鮭フレークとは一味違う逸品だ。

新潟が誇る魚のプロとご飯のプロが手を組み生み出したのが「キングサーモンのづけ丼4食セット」(6,480円、季節限定)。キングサーモンとイクラの醤油漬けにサトウの「魚沼産コシヒカリ」という組み合わせ。発売して20年になる贅沢なロングセラーだ。

この日は「加島屋」のトップを相手に佐藤自ら新商品の提案にやってきた。持参したのは新潟イチオシの新しいブランド米「新之助」のパックご飯。これで新たなセットを作ろうと目論む。サトウと「加島屋」が新たな商品開発に動き出した。

米離れが進む逆境にありながらサトウ食品の売り上げは右肩あがりで、469億円まで伸ばした。しかし、佐藤は言う。

「売り上げトップよりも『一番おいしい』と言ってもらえるのが一番うれしいです。一番おいしかったら業界トップになれると僕は思っています」

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