安売り競争で赤字が拡大~倒産危機から奇跡の復活
餅やパックご飯を使ったさまざまなレシピの情報発信をして売り上げアップに拍車をかけるサトウだが、つい10年ほど前には倒産の危機に追い込まれていた。
サトウの成功を見た大手食品メーカーが1990年代後半、サトウに続けと「パックご飯市場」に続々参入。そんな中で2008年、リーマンショックが食品業界を直撃する。日本中がデフレの波に飲み込まれ、一つ130円前後で売られていた「パックごはん」は軒並み100円以下に。価格破壊が起こってしまったのだ。
当時の佐藤は営業本部長。大手との価格競争のど真ん中で戦っていた。
「参入してきたメーカーは数を売るために安く売る。するとどんどん価格競争に入っていきました」(佐藤)
コストのかかる釜炊きをしながら安売りすれば、売れば売るだけ赤字になる。そんな絶体絶命の状況に追い込まれてしまったのだ。そこで当時の社長、2代目の功がとった行動は「今のうちの安い値段で売り続けたら会社は潰れる。価格を元に戻せ」だった。
しかし、現場の営業マンからは「各社がシェアの競争をしている時だったので、厳しくなるな、と」(営業本部・鈴木覚)、「『第一線を退くのか』と。価格競争から脱却して業界1位を堅持できるのか」(当時の営業担当・中川誠二)という声が上がった。
その時、営業本部長だった佐藤はある行動に出た。全国の営業マンを全員、パックご飯の工場に集めると、「考え方を変えてほしい」と、製造現場をあらためて見てもらい、いかにコストをかけて作っているかを理解させたのだ。
「作り上げてきた米飯事業を続けるためにはやらなくてはいけないと、覚悟を決める起点になりました」(鈴木)
安売りをしないでやっていくと、社内は団結した。しかし、小売業者からは総スカンをくらい、取引が半減した現場もあった。
「売り上げが5億円くらいは落ちると覚悟していましたが、最終的には10億円くらい落としました」(佐藤)
売り上げは減り続け、危機は膨らんでいったが、およそ2年後、消費者から「値段は高くてもおいしい」という声が上がり出す。消費者は20~30円高くてもサトウを選び、売り上げが回復。サトウは危機を脱した。