ロシア人は自分達の国と文化・伝統に誇りを持っています。抑圧的な政治を嫌う人は多くいますが、おっちゃんのウォッカ、今はカナダ国籍となった友人がずっと大事に持っている伝統衣装、英語の授業に使われた古いロシア文学。
子供達のダンスの先生も誇り高きロシア人バレエダンサーだし、E S Lクラスで一緒になった女の子は「ロシアの銀行も政府もひどい」と非難しながらもいつもロシアのナショナルチームのジャケットを着て「でも食べ物はロシアの方が断然美味しいわよ!」と言っていました。
思えば私の母も独身時代にロシア(旧ソビエト連邦)に旅をして、私は子供の頃に母が持っていたロシア人形のマトリョーシュカで遊んでいたし。私達の周りには沢山の素晴らしいロシアがあり、多くのロシア人はロシアを愛し、それを外国人である私達にも喜んで紹介してくれます。
ダンスの先生、アナはいつも「日本には素晴らしいバレエダンサーがいるわ。世界中のバレエの中で私がみて素晴らしいと思うのはもちろんロシア、そして日本のバレエよ」と言ってくれます。
自国政府の凶行を忌み嫌いながらも母国を愛する気持ち。その板挟みに、今多くのロシア人が苦しんでいます。
冒頭に話した私の友人との電話は、彼女の辛い気持ちを聞きながら30分近くが過ぎました。ロシア政府への失望と、外国で暮らす自分達にまで向けられるロシア批判を恐れる気持ち。
反戦運動は世界を上げて行うべきだと思いますが、それが個人的なヘイトにつながることのないように。第二次大戦下の日系カナダ人や日系アメリカ人が受けたような不当な苦しみが繰り返されない事を祈ります。
憎しみの連鎖がこれ以上広がらないうちに、尊い命がこれ以上失われないうちに、自国政府に対し反戦を訴えるロシア人達の愛と勇気のある行動と世界の善意が奇跡を起こしますように。
著者/ミセス・サンシャイン(「【日付変更線の向こうから】」連載)
image by: Shutterstock.com