プーチンが描く「核使用」恐怖のシナリオ。国際社会の完全なる分断

 

プーチン大統領のチェックリストにまだいろいろな案件が含まれていそうなことと、今回のウクライナ軍による攻勢とそれを支える欧米諸国という図式によって、チェックリストの完成はかなりの困難を極めることが予想されますので、今回のウクライナ戦争は非常に長引く可能性があります。

ところで、ここで【ウクライナ戦争が長引く】という際、私は大きく分けて2種類の“戦争”についてお話ししています。

一つ目は、これまでに話している【武力紛争という意味での戦争】です。

そして二つ目は、【国際政治経済体制における“完全なる分断”と“二分化”という意味での戦争】です。

まず、一つ目の武力紛争について触れます。

こちらは毎日のようにメディアはもちろん、インターネット上で“どのような武器が使われているか”“破壊されたか”といった情報が盛り上がっていますし、欧米諸国がどのような武器・装備をウクライナに支援しているかというリストも出回っていますのでここでは詳しく触れませんが、確実に戦争の長期化と国際化、それに加えて複雑化も進んでいることは確かです。

長期化については、ウクライナの予想外の善戦と、思いのほか通常兵器の運用がうまくいっていないというロシア軍サイドのお家事情もあり、戦闘は一進一退の攻防を繰り返しています。

結果として、ウクライナ市民に大きな犠牲が継続的に出てしまっています。まさに出口の見えない悲劇です。

そこに欧米諸国がウクライナへの軍事支援の内容をアップグレードしていくことにより、より物理的な戦いは激しさを増し、戦闘は膠着状態に陥ることになるでしょう。

あとの懸念は、明らかにロシア側に不利な状況が見えてきた際に、プーチン大統領が大量破壊兵器使用に踏み切るか否かという問題です。

ここには核兵器、生物兵器、そして化学兵器が含まれますが、もし戦争においてロシアが(プーチン大統領が)コーナーに追い込まれたと感じた際には、それらの発動もないとは言い切れません。

個人的には、“核兵器の使用の可能性はまだ低い”と思っていますが、この際、アメリカを直接攻撃するような核兵器(戦略核兵器)の使用はないという意味で、ウクライナ国内やその周辺国に対して使われる可能性がある戦術核兵器については、ないとは言い切れません。もちろん使用においては、ロシアもかなりのダメージを受けることになりますが(国際政治経済上)、ロシアにも、欧米諸国にも非常に困難なジレンマを突き付けることになります。

それはどういうことなのでしょうか。

一つ目は【ロシアが核兵器を使用した場合、欧米諸国とその仲間たちは一致した対応を取ることが出来るか】という問いです。

EU諸国にとっては、ロシアとは地続きであるという地政学的な要素が直接に絡み、ロシアによるウクライナに対する核使用は、自国・自エリアへの直接的な脅威と感じるかもしれません。

その場合、果たしてEU諸国はこれまで同様に対ロ制裁を強化し、徹底的な対峙を選び続けられるでしょうか。

もしかしたら、対ロ批判のトーンが弱まり、プーチン大統領をこれ以上、刺激すべきではないと感じ、欧米サイドでの対ロ包囲網がEUサイドで緩みが出てしまいかねません。

つまりロシアにとっては、制裁の抜け道が出来る可能性です。

EU諸国としては避けたいシナリオでしょうが、同時に自国に対してロシアの核の脅威という影が覆いかぶさってくることもまた極力避けたいシナリオでしょう。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • プーチンが描く「核使用」恐怖のシナリオ。国際社会の完全なる分断
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け