プーチンが描く「核使用」恐怖のシナリオ。国際社会の完全なる分断

 

その背景には、プーチン大統領参加時にはG7はボイコットすることで、議長であるジョコ・インドネシア大統領と政府の顔をつぶし、顔に泥を塗ることになってしまいます。

そうなったら、当のインドネシアはもちろん、途上国サイドのメンバーからの大バッシングがG7に向けられることになります。

それはそして非難しているプーチン大統領を結果的に利してしまう可能性が高まります。

リーマンショック直後に、G7単独では解決できず、主要な途上国との連携なしには達成できない国際問題(気候変動、パンデミックへの対策、エネルギー・食料安全保障の確保など)に協力して取り組む枠組みを意図していたG20が機能不全に陥ることをも意味します。

そしてそこには、すでに財務大臣会合でも垣間見られたように、反ロシア陣営と親ロシア派という分断が生まれ、より明確に表れることになります。

そしてそれは、また、すでに解決されたと思っていた【先進国 vs. 途上国】の対立軸を復活させることにもつながります。

これはつまり、対プーチン・ロシア包囲網が弱まり、ロシアと中国を核とした勢力圏が作られることに繋がり、対立が明確になってくると、【国際協調の下、地球的な問題を解決しよう】という当初のG20の理念も、消え去ることになりかねません。

そしてそのような分断は、ゆくゆく中国を利することに結びついていくのですが、それを欧米諸国とその仲間たちでつながる反ロシア包囲網の構成国たちはどこまで理解できているのでしょうか?

最後にこのような中、G7のメンバーで、かつ直接的な利害関係をロシアとの間に抱える日本はどのように対応すべきでしょうか?

話すと長くなるので少しだけにしますが、結論としては、【これまでのように目立つ必要もないし、奇をてらう必要もなく、地味でつまらないと思われたとしても、明確な態度表明は行わず、conflicting partiesの間で、両方向をきちんと見据えた対応への回帰】が必要だと考えています。

果たして、今の対応はそうなっているでしょうか?

武力紛争はいつか終わりますが、今回のウクライナ戦争でより強固かつ明確になってしまった“世界の分断”という戦いを終わらせるには、相当長い時間を要することになるでしょう。そして、もしかしたら、もう2度と解決は訪れないのかもしれません。

皆さんはどうお考えになりますか?

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