指揮官のあり方
次は、指揮官についての言葉、4つです。
●善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に、善く戦う者の勝つや、智名、勇攻なし
「いくさ上手な者は、勝ち易い状態を作り、無駄なく自然に勝つ。だから、勝っても智謀は人目につかず、その勇敢さを賞賛されることもない」
ロシア軍は勝ち易い状態を作ってはいません。また大いに無駄もしているようです。ここからすると、プーチン大統領はいくさ上手とはいえません。
● 兵は勝つことを貴び、久しきを貴ばず。故に、兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり
「戦争は勝つことが大事で、長く戦うことが狙いではない。この道理をわきまえた将であってこそ、人民の生死、国家の安危をまかせるに足るのである」
ウクライナ進攻は、思いもよらず長引いています。プーチン大統領は国家の安危を任せるに足る人物と言えるでしょうか。
● 主は怒りを以て師を興すべからず。将は慍(いきどお)りを以て戦いをいたすべからず
「一国の王たる者、一軍の将たる者は、怒りにまかせて兵を動かしたり戦ったりしてはならない」
孫子は、怒りは時がたてば喜びに変わることもあるが、国は滅んでしまったらそれでおしまいだし、人は死んでしまったら二度と生き返らないからだ、と言葉を続けています。
ウクライナ進攻では、目立つのは怒りばかりです。
● 将、九変の利に通ずる者は、兵を用うることを知る
「臨機応変を知り、変幻自在に兵を動かすことのできる指揮官だけが、任務を成功させる」
今回の戦いでは、どちらの指揮官が「九変の利」に通じているでしょうか。その能力が試されています。
いかがでしょうか。孫子の言葉は、実際の戦闘の場面を前にして読んでみると、一層理解が深まる気がします。
■今日のツボ■
・戦争は、国家の存亡にかかわる重大事だということを肝に銘じる
・一番良いのは、戦わないで勝つことである
・戦うならば短期決戦を目指す。長引いたら成功
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