では、一番上の「世界観」とは何でしょうか?
たとえば、キリスト教徒の人たちは、「アダムとイブが創造主に逆らって堕落し、原罪を背負った。しかし、救世主イエス・キリストが現れ救いの道を開いてくださった」という「世界観」を持っています。
共産主義者の人たちは、「私有財産がうまれたことで、貧富の差がうまれ、貧富の差がうまれたことで階級がうまれた。人類歴史は、階級闘争の歴史だ。そして、階級闘争の最終段階で、労働者は資本家を打倒し、万人平等の豊かな世界を創る」という「世界観」を持っています。
たとえば、バイデンの世界観は、「民主主義」です。一方、プーチンの世界観は、「民族主義」です。
バイデンは、ロシア―ウクライナ戦争を、「善の自由民主主義勢力 対 悪の独裁者の戦い」と位置づけている。それで、ウクライナを支援する国は多く、ロシアを支援する国は少ないのです。
ロシア支持を明言している国は、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリアしかいません。中国やインドは、正常な貿易関係をつづけていますが、立場は「中立」です。
プーチンの建前は、「ロシアの利益」です。一方ゼレンスキーの建前は、「世界の自由と民主主義を守っている」です。どっちが支持を得られるかは明らかでしょう。プーチンは、「世界観レベル」でゼレンスキーに負けているのです。
では、2番目の「政策」とは何でしょうか?
たとえば、「民主主義」とは、「国民に主権がある」という意味です。独裁国家が民主主義に移行するためには、何が必要でしょうか?
- 自由で公正な普通選挙
- 言論の自由
- 信教の自由
- 結社の自由
などが必要でしょう。ところで、言論の自由は「世界観」ではないですね。「民主主義」という世界観を実現するための「政策」です。
というわけで、私なりに、世界観、政策、大戦略、軍事戦略、作戦、戦術、技術についてお話させていただきました。
はっきりいえば、プーチンは【 戦術的大統領 】です。それで、進めば進むほど孤立して厳しくなっていく。ナポレオンやヒトラーと同じタイプの指導者でしょう。
こんな視点からも、プーチンの長期的敗北は不可避なのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年6月19日号より一部抜粋)
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