原発再稼働にも積極的。すこぶる怪しい岸田首相「核廃絶」の本気度

 

むしろ、二つの条約への岸田首相の対応ぶりは、自民党内の保守派、とりわけ安倍晋三元首相の意向に逆らわず、なおかつ被爆地からの反発も避けるという、連立方程式の「解」として導き出されたものではないだろうか。

周知の通り、ロシアのウクライナ侵攻後、安倍氏は核シェアリングの議論を呼びかけている。たとえばこの安倍発言。

「NATOでも例えば、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアは核シェアリングをしている。自国に米国の核を置き、それを(航空機で)落としに行くのはそれぞれの国だ。…世界はどのように安全が守られているか、という現実について議論していくことをタブー視してはならない」(2月27日、フジテレビ「日曜報道THE PRIME」より)

つまり、安倍氏は米国からの借り物でいいから日本に核兵器を置きたいのだろう。はっきり言うと政治的リスクがあるため、「議論をタブー視してはならない」と言い換えているにすぎない

この国において、核兵器に関する議論がタブー視されてきたのは事実である。だが、それが異常かと言うと、そんなことはない。現実に犠牲者の遺族や被爆者がおり、核被害の悲惨さが伝えられてきた国の人々が、他と違う潔癖な平和観を抱くのはあたりまえである。

にもかかわらず、安倍発言を持ち上げる識者、政治家らは、核廃絶を願う人々に対し「平和ボケ」だの「お花畑論」などとからかって切り捨てる。10年近くにも及んだ安倍・菅政権を経て、今の自民党にもそういう議員が多くなった。

安倍氏はなにかと岸田首相の政策にちょっかいを出したがる。ことアベノミクスと安全保障政策に関する執念は尋常ではない。

6月17日の閣議で、防衛省の島田和久事務次官の退任が決まったが、その人事をめぐり、安倍氏と岸田首相との間でちょっとした“事件”があった。

島田氏は第2次安倍政権で首相秘書官を約6年半も務めた。いわば安倍氏の腹心であり、「防衛費のGDP比2%」の旗振り役と言われていた。安倍氏とその実弟である岸防衛大臣は2年間が慣例とされる次官の任期を延長するよう官邸に要請したが、聞き入れられなかった。

産経新聞は、安倍氏が岸田首相を議員会館に呼びつけて交渉したときの模様を、次のように書いている。

16日午後1時半ごろ、安倍氏は議員会館の自室で首相と向き合っていた。防衛政策全般について意見交換する中で安倍氏は島田氏退任人事の再考を促したが、首相の答えは「ノー」だった。今回の人事について首相は周囲に「もう決まっていることだ」と漏らした。

人事にまで安倍氏の口出しは受けないという岸田首相の意地が感じられる一幕だ。

しかし、それも裏を返せば、ここまで安倍氏の言いなりになってきているんだという心情が噴出したと受け取ることもできよう。次官人事に防衛政策の違いが出たというより、防衛予算や核への対応で安倍氏とさしたる違いがないからこそ、せめて人事は安倍色をなくしたかったとは言えないだろうか。

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