露軍に10万の死傷者。負けしか見えぬプーチンが受け入れる「和平案」

 

南部ヘルソン州

ロ軍のスロビキン総司令官は9日、ドニエプル川西岸からのロ軍撤退について、「ヘルソン市や隣接する複数の集落が現在陥っている戦況では十分な補給や必要な機能維持などが見込めない」ことが理由だと示した。

この撤退について、クレムリンの前で「裏切り者どもが!ボロ負けじゃねえか!」と書かれたプラカードで撤退に抗議する人もいて、強硬派のロシア国民には不評であるが、強硬派のカディロフとプリゴージンは、この撤退を支持した。

ロ軍はヘルソン市内でネット回線や通信機器、電気・水道・電波塔などのインフラを破壊した。

11日、ロシアは、ロ軍の正規軍の撤退は完了したと発表して、ドニエプル川の橋をすべて爆破した。しかし、ダム破壊はしなかった。

このため、橋を全て破壊されたことで、ヘルソン市は完全な陸の孤島になり、このロ軍ヘルソン市守備隊は、完全に見捨てられた。

このため、ヘルソン市街で約1万6,000人ほどのロ軍兵士は私服に着替えて潜伏しているという。

その中、ヘルソン市庁舎にウ軍特殊部隊が到達。その後、安全を確かめて、ヘルソン市の中心部にウ軍本体が到着し、これから、ロ軍の残留部隊の掃討になる。ロ軍協力者も調査開始した。ロシア国籍取得者も調べるようである。

ゼレンスキー大統領も11日、「ヘルソン市を奪還。歴史的な日だ」と表明した。

もう1つ、ロ軍の防空兵器が、すでにドニエプル川東岸へ撤退済みのため、ウ軍のドローンが活発に動けることと、HIMARSなどの砲撃で、脱出地点ベリスラフ・ベセル・アントノフスキー橋や対岸脱出先カホフカで大渋滞して撤退するロ軍を大量排除した。ベリスラフではロ軍車列に対して、大量の爆撃がされていた。

撤退するロ軍は、最大3万人規模であり、「この戦力が川の南に引き上げるには、数日間、いや、数週間はかかるだろう。継続的な砲撃にさらされ、渡河能力が限られるなかでの撤退は、容易でもなく、迅速でもないだろう」とマーク・ミリー米軍統合参謀本部議長はいう。

もう1つ、ドニエプル川の水温は氷水のようであり、砲撃で船を破壊されて川に飛び込むと、死に繋がるということで、ロ軍の犠牲者数は、大変なようである。現在渡河出来ず残ってるのは動員兵と、機械化歩兵で、かなりの人数が残っているし、クリミアの病院には大量の負傷したロ軍兵士が運び込まれている。

そして、今後は、ロ軍もウ軍も川を越えるのは不可能に近く、砲撃戦が続くと予想される。

どちらにしても、ロ軍は難しい撤退作戦と渡河作戦の2重の苦難な作戦を行うことになり、大きな犠牲が出た。どうして、秘密裏に撤退作戦を行わなかったのかというロシア国内での批判も出る可能性もある。

この敗戦で、「イランはロシア連邦への武器の供給を停止しました」と、ウクライナ大統領府のアレストヴィッチ顧問は述べた。イランから申し出があったのであろうか?

しかし、撤退できたロ軍部隊は、メリトポリの方向へ移動して、東部戦線に投入されることになりそうだ。先に精鋭部隊を撤退させたので、東部戦線は、ロ軍の攻勢が激しくなっている。早く、ウ軍もロ軍に続いて、東部戦線を固めないといけない。

そして、ゼレンスキー大統領は12日夜、南部ヘルソン州のドニエプル川西岸地域からのロシア軍撤退を受け、ウクライナ軍が州都ヘルソン市のほか60以上の集落を奪還したと発表した。南部や東部のさらなる領土奪還に決意を示した。

同時期に、ヘルソン州の「副知事」を名乗る親ロシア派のキリル・ストレモウソフ氏が、交通事故死した。ストレモウソフ氏は、ヘルソン市を守るために義勇兵を募集して、徹底抗戦を主張で、ロシア政府の方針とは違う主張をしていた。このため、言動がコントロールしきれないストレモウソフ氏は用済みにしたようだ。

そして、プーチンは「交通事故」で死亡したストレモウソフ氏に対し「勇敢勲章」を追贈する大統領令に署名したという。用済みにしておいて、勲章である。

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