重大事態いじめを放置。中3女子生徒自死事件で判った富山市教委の大失態

 

富山市教委の大失態

いじめ防止対策推進法及びそのガイドラインによれば、いじめの申告があった場合、学校は調査をしなければならないことになっている。

遺族がいじめを訴えている以上、まず、この調査を行うべきであるが、報道によれば、この中学校では年2回行われるいじめのアンケートに基づく見解しか出てきていない。

さらに、この校長のコメントには大きな問題が隠されている。

(校長のコメント)「一方的であるか、お互い様ということが、僕は大きいと思います」というのは、いじめ防止対策推進法における「いじめの定義」に大きく反しているのだ。

そもそも学校関係者の中には、いじめ防止対策推進法を軽視し、その定義が広義であることに批判的な意見を持つものが多い。

しかし、いじめ防止対策推進法は大津の凄惨ないじめ自死事件をきっかけに、こどもの命を守るためにわずかな異変にも対応していこうと作られたものである。

だからこそ、いじめの定義は広義であり、丁寧に対応していこういうものであるのだ。

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

いじめの定義というのは、文科省が毎年公表している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」において定義付けられたもので、いじめ防止対策推進法ができる前から存在している。

下記は平成6年から18年の定義改正まで定義とされたものである。

「いじめ」とは、「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない」とする。

 

なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

この中学校校長のコメントに「一方的であったか」という言葉があるように、現行の法律定義を軽視し、勝手な解釈によって歪んだいじめ対策を行う者は、過去の定義への回帰を実践する傾向がある。

つまり、この校長は勝手な解釈で本来いじめとして対応するところ、その対応を怠り、「いじめではない人間関係のトラブル」にすり替えていたのではないか。

仮に「いじめの申告」があってから「不登校」となったとしよう。

中学1年生の段階で不登校になって、現在が中学3年生だとすれば、すでに2年は不登校の状態になっている。

本来、いじめを要因として不登校(通算で30日間の欠席など)になっている場合は、通常のいじめではなく「重大事態いじめ」として取り扱うことになっており、「速やかに学校の設置者を通じて、地方公共団体の長等まで重大事態が発生した旨を報告する義務が法律上定められている(法第29条から第32条まで)。この対応が行われない場合、法に違反するばかりでなく、地方公共団体等における学校の設置者及び学校に対する指導・助言、支援等の対応に遅れを生じさせることとなる」(文科省、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインより)。

つまり、学校は不登校の段階で、富山市教育委員会を通じて富山市の市長に対して、「いじめの重大事態」が発生したことを報告しなければならないのだ。

一方、遺族が何の疑いもなく「いじめで不登校」であったことを報道陣に説明しているわけだから、現段階で改めて「いじめ」を否定することは、そもそもできないのである。

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